型銅品の生産体制強化

世界のあらゆる産業で需要増加が見込まれる

可能性の素材「タングステン」を世界へ

タングステンを取り巻く環境と
安定供給のカギを握る
「資源循環」

自動車や航空機、医療などあらゆる産業に欠かせない、可能性を秘めた素材「タングステン」。その市場規模は重量で表すことが多く、2022年のタングステン粉・タングステンカーバイド粉の世界の推定市場規模は約10万t。そのうち超硬工具向けが約60%を占めていました。そうした中で、三菱マテリアルは中期経営戦略2030において、電子部品向けの供給量を30%近く増やす目標を掲げています。

技術の進化に伴い、需要増加が見込まれるタングステンですが、一方で、調達リスクが高くなりつつあります。その約50%が中国に埋蔵されており、世界の供給量の85%を中国に依存しているからです。そのため、世界情勢の影響でタングステンが調達できなくなるリスクを低減することが極めて重要です。

可能性の素材「タングステン」
可能性の素材「タングステン」
世界のタングステン埋蔵量

そこで三菱マテリアルグループは、中期経営戦略2030において、2030年度までに「超硬工具製品におけるリサイクル原料の使用比率80%以上」の達成を目指しています。その成否を握るのが、タングステンスクラップの回収量の拡大とリサイクル能力の向上、つまり「資源循環」の強化です。

その点、三菱マテリアルグループの日本新金属社は、タングステンを含むスクラップから、タングステン粉末・タングステンカーバイド粉末を一貫生産できる、国内で唯一のタングステン精錬技術を保有しています。そんな日本新金属社の供給能力は、年間2,500t にも及びます。

また、三菱マテリアルグループは2024年12月に100年以上の歴史を有する世界有数のタングステン製品メーカー、H.C.Starck社の全株式を取得。これにより、三菱マテリアルグループは日本、欧州、北米、中国の4大市場においてタングステン事業の拠点を有することになりました。同社を買収したことにより、三菱マテリアルグループの供給能力は世界トップレベルの年間約15,000tになり、これは従来の6倍に相当する供給能力です。

三菱マテリアルは、タングステン製品のグローバルリーディングカンパニーを目指し、世界のタングステンのリサイクルを一気通貫で担えるようにグループの力を結集し、資源循環をより一層強化していきます。

世界のタングステン埋蔵量
菅原 悠人さん
菅原 悠人さん

長年の操業経験や
ノウハウを活かし
あらゆるスクラップを
タングステン粉末に
変える

日本新金属株式会社
秋田工場
生産技術グループ

菅原 悠人

私は既存のリサイクルプロセスの生産性を高める技術改良・支援や、新規プロセスの開発を担っています。国内外で回収されたスクラップは、当社でサイズや品位などを確認してから前処理、酸化焙焼を経て酸化粉末にします。この粉末を湿式精錬工程で不純物を除去し、乾式処理工程でか焼(かしょう)、水素還元、炭化し、タングステン粉末製品(WO3/W/WC)を製造します。

リサイクルの難しさは、スクラップを「一定のアウトプット」に落とし込まなければならない点です。その点、秋田工場には長年の操業経験で培ったノウハウがあるため、あらゆるスクラップから高品質のタングステン粉末を得られます。これは感性の高いオペレーター、判断の柔軟な工程管理者の両輪が織りなす成果です。

また、H.C.Starck社との連携により、よりグローバルに事業を展開できる未来に意義を感じています。技術連携によってお互いの弱みを補い、強みを磨き、さらには新しいリサイクルプロセスを共同開発できるかもしれません。未来の可能性にわくわくしています。

タングステンの安定供給では、リサイクル工程の安定処理が何より重要です。目の前の業務を愚直にこなすことこそ、中経営戦略2030の実現に直結すると考えています。また、スクラップの集荷拡大に伴い、スクラップを低コストで処理できるリサイクルプロセスの開発も求められます。既存技術の適正化と新規技術の開発に積極的に挑戦し、タングステンの安定供給に貢献します。

加藤 優子さん
加藤 優子さん

社会環境やお客様の
ニーズに合わせ
タングステンの
可能性を拡大

日本新金属株式会社
秋田工場
生産技術グループ

加藤 優子

私の仕事は、イオン交換などの技術を組み合わせてスクラップから不純物を取り除き、きれいなタングステンを作り出すことです。スクラップにはタングステンの他に、コバルトなどさまざまな元素が含まれます。これらを国内唯一の湿式精錬技術で取り除けることが、秋田工場の強みです。

タングステンの安定供給を支え、その可能性を広げるためには、予期せぬ不純物が入ったスクラップや処理が難しいスクラップにも対応できる、高度な技術力が求められます。その鍵となるのが湿式精錬です。不純物を取り除くためにはどの薬剤をどの程度入れるべきか、これまで培ったノウハウや知見を活かし、手法を確立させていきたいです。

湿式精錬における環境対策にも取り組んでいます。秋田工場はアンモニアを扱うため、排水中の窒素量が多いという課題があります。窒素が増えすぎると、水質への影響が懸念されます。環境に配慮し、持続可能な事業を拡大するため、アンモニア窒素を回収し再利用することを目指しています。

また、温室効果ガスの排出の少ないリサイクル技術を確立させるなど、社会のニーズも踏まえた業務改善に取り組みます。そして、グループ全体でリサイクル技術を磨き、タングステンの資源循環を促進し、事業拡大につなげていきたいです。

三菱マテリアルはタングステン製品のグローバルリーディングカンパニーを目指し、これからもグループ一丸となって、資源循環をより一層強化し、タングステンの可能性に挑み続けていきます。