地熱発電でカーボンニュートラルに挑む

再エネ電力自給率100%を目指して

地熱発電で
カーボンニュートラルに挑む

三菱マテリアルの
ゼロエミッション。
成否を握るのは、地熱発電

三菱マテリアルは、国の目標年である2050年度より5年前倒した2045年度をカーボンニュートラルの目標年とし、再生可能エネルギーの活用と温室効果ガス(GHG)削減に取り組んでいます。また2050年度には、自社で消費する電力に匹敵する再エネ発電を実現し、実質的な再エネ電力自給率100%を目指しています。

その成否を握るものこそ、地熱発電です。地熱資源に恵まれた日本では、天候に左右されることなく安定的に電力を供給できる地熱発電の可能性に大きな期待が寄せられています。三菱マテリアルは50年におよぶ地熱発電実績に基づき、安定した再生可能エネルギーの開発、発電事業を行っています。

その最新プロジェクトが、2024年3月に岩手県で運転を開始した「安比地熱発電所」です。現在は三菱マテリアルをはじめとする3社の共同出資で設立した安比地熱株式会社によって管理運営がなされ、14,900kWを発電しています。

クリーンエネルギーを未来へ。
培った技術力と気概は次世代へ

安比地熱発電所プロジェクトを主導した三菱マテリアルの阿部 龍巳さんと、安比地熱社の佐々木 岳さん。
お二人の挑戦の軌跡と地熱発電に懸ける思い、その先に描く未来についてお聞きしました。

Casino銅鉱山プロジェクト

安比地熱株式会社
技術部
主任

佐々木 岳

三菱マテリアル
再生可能エネルギー事業部
地熱事業開発部長

阿部 龍巳

Casino銅鉱山プロジェクト

安比地熱株式会社
技術部
主任

佐々木 岳

三菱マテリアル
再生可能エネルギー事業部
地熱事業開発部長

阿部 龍巳

地熱発電では、地下2,000m付近にある地熱貯留層からマグマに熱せられて高いエネルギーを得た高温で高圧の熱水や蒸気を取り出し、その蒸気を用いてタービンを回し発電します。そのため地熱発電開発では生産井(※1)と還元井(※2)を掘る必要があります。そして、それらの掘削工事を成功へ導く地下部門のリーダーは、それ相応の知見を備えておかねばなりません。

そんな地下部門のリーダーに抜擢されたのが、入社以来キャリアの半分以上、地熱事業に携わってきた阿部さんです。「困難続きの4年間でしたが、特に大変だったのは井戸の掘削です。井戸1本につき約3か月かけて掘り進めていくのですが、終盤は温度が200度を超えるので文字通りマグマとの戦いでした」と、阿部さんは往時を振り返ります。

掘削を行う際には事前調査を行うものの、地上から地下の全てを知り得ることはできないと、阿部さんは話します。「掘ったものの蒸気が出てこなかったり、逆に掘っている最中にマグマで熱せられた蒸気が急に噴き出したりするリスクがあります。十分に準備はしていますが、自然相手だと、もう怖いことばかりです。それでも地熱発電所がフルパワーで稼働できるだけの蒸気を取り出さねばなりません。それが私たちの使命ですから。そんな使命をしっかりと果たすために、地下の状況を予測可能としたのは、佐々木さんをはじめとする若手技術者たちでした」。

入社2年目に阿部さんのもとで地熱発電所の蒸気設備管理を務めた佐々木さんが、阿部さんと働くのは2度目。今回は安比地熱社の社員として阿部さんとは異なる立場で本プロジェクトに参加しました。「掘削リスクを少しでも軽減させるため、最新のモデリングツールを使って地下の状況を可視化することを試みました。また、そのデータをもとに地熱貯留層があるであろう位置も予測。その方向に掘り進めた結果、掘り当てることができた時は心から安堵しました」と、佐々木さんは微笑みます。

そうした困難を乗り越え、安比地熱発電所が運転開始した今、お二人の次なる挑戦をお聞きしました。

佐々木さんは、「地熱発電を拡大していくことは重要ですが、既存の地熱発電所の操業管理も同じくらい大切なので、まずは安比地熱発電所の安定操業に努めます。また、安比地熱発電所ほど大きな発電所を操業する機会はなかなかないので、今回の経験をしっかり吸収し、次の地熱発電開発に活かしていきたいです」とまっすぐ前を見つめます。

そんな佐々木さんの言葉を受けた阿部さんは、「地熱発電は運転開始したら終わりではなく、高い発電出力を安定させつつ、安全に操業していくことが重要ですからね。それから本プロジェクトは、調査段階も含めると20年以上前から取り組んできました。つまり、諸先輩方がつないできた血と汗の結晶が、ようやく実を結んだということ。そして次は、私たちが持てる知識や経験、そして気概を次世代につないでいく番です。今後は次世代の育成を通して、地熱発電事業の発展に貢献していきます。また、三菱マテリアルは地熱のみならず、水力、太陽光発電事業も行っていますが、地下部門のリーダーとして、さらに地熱開発を活発化したいと考えています」と、笑顔を見せます。

本プロジェクトの立役者であるお二人の瞳は安定操業の先の未来、そして次なる挑戦を見据えていました。

(※1)生産井:地熱貯留層から蒸気を取り出す井戸
(※2) 還元井:熱水を地熱貯留層に戻す井戸