三菱マテリアルグループは、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」という私たちの目指す姿に向けて、2023年度から2030年度までの中期経営戦略「中経2030」に基づく施策を推進してきました。しかし、自動車や半導体市場の変化、銅精鉱の購入条件の悪化など、外部環境は当初の想定から大きく変化しています。こうした状況に対応するため、外部環境が厳しい時でも収益性を確保できる体制を目指し、「抜本的構造改革」に取り組むとともに、2026年度以降の経営戦略を見直し、新たな中期経営戦略を策定しました。新中期経営戦略の各施策の取り組みを通じて、資源循環ビジネスで未来を創る企業となり、持続可能な社会の実現と企業価値のさらなる向上を目指します。
新中期経営戦略では、「資源循環ビジネスで未来を創る企業」となることを基本方針に掲げ、資源循環ビジネスを通じて、限りある資源を最大限に活用し、廃棄物を新たな価値へと転換することで、環境負荷の低減と経済的価値の両立を目指します。「資源循環ビジネスのグローバル展開」、「二次原料製錬の拡大(E-Scrap処理量倍増)、タングステンリサイクル率100%」、「銅精鉱の共同購買」を成長戦略および重要施策として、企業価値の最大化を図ります。
銅の将来需要は、脱炭素化やデジタル化の進展により長期的に増加すると予測される一方、銅精鉱の供給量には限りがあり、E-Scrapなどのリサイクル原料の重要性がますます高まっています。当社は、世界トップクラスのE-Scrap集荷・処理能力と技術力を有していることに加え、家電リサイクルから伸銅品までのバリューチェーンを保有しています。これらの強みを活かし、E-Scrapの集荷・処理をグローバルに展開することで、2035年度までに処理量を倍増することを目指します。
レアメタルであるタングステンについては、次世代電池や防衛産業での需要増加が見込まれる一方、一次原料の埋蔵地域は偏在しています。当社は2024年度にドイツのH.C.Starck社を買収し、世界最大のスクラップ処理能力を獲得しました。さらに処理能力を拡大し、タングステン製造拠点におけるリサイクル原料比率を2030年度までに100%とする体制を構築することで、需要増に応えるとともに収益力の向上を図ります。
今回の組織再編では、リサイクル原料の集荷・処理から、伸銅品やタングステン素材までを「マテリアル領域」とし、さらに川下に加工を進めた高機能製品や超硬製品を「プロダクト領域」と位置付け、それぞれのグローバル展開を加速します。マテリアル領域では、関連事業を集約することで、二次原料製錬や資源循環ループ、タングステンリサイクルの拡大を推進します。プロダクト領域は、高付加価値な製品やソリューションの提供を通じて収益性の向上を図ります。
量から質へ経営を転換し、銅精鉱処理から二次原料製錬への収益構造の転換、生産体制や事業内ポートフォリオの最適化、本社機能の集約などを迅速に進めます。
2028年度には、2025年度比でROEプラス3%ポイント、ROICプラス2%ポイントの改善効果を織り込んでいます。
2028年度の財務目標は以下の通りです。
また、2029年度以降はROE10%以上を長期目標とし、持続的な成長を目指します。
2026年度から2028年度までの3年間累計で、約5,000億円のキャッシュインを見込んでいます。財務規律を維持するため、一部を有利子負債の返済に充当しますが、営業キャッシュフローや事業売却等で得た資金は、資源循環ビジネスのマテリアル領域を中心とした成長投資に優先的に振り分けます。
株主還元については、安定的な配当の継続を重視し、DOEをベースとした方針への変更を検討しています。自己株式取得については、キャッシュフローの状況、株価、および財務規律を踏まえ、機動的に実施することを検討します。
マテリアル領域における銅の資源循環では、二次原料製錬への転換を進め、収益性の向上を図ります。銅精鉱処理量は2025年度比で60~70%に減少させる方向で検討する一方、E-Scrapの集荷量および処理量は2035年度に倍増を目指します。資源循環ループを自ら構築・拡大し、トレーサビリティを確保したリサイクル電気銅やリサイクル伸銅品の安定供給を実現します。
グローバル展開に向けた具体策として、集荷面ではサンプリング・分析技術の強化やリサイクラーとの協業を推進します。日本ではE-Scrap処理量拡大のための設備投資を進め、銅精鉱処理量に対するE-Scrap比率最大化に向けた技術開発を加速します。欧州では三菱マテリアルヨーロッパ社で二次原料製錬所の新設を検討し、米国ではExurbanプロジェクトを推進しています。さらに、日本で確立した資源循環スキームやネットワークを海外にも展開し、グローバルでの資源循環ループ構築を目指します。
伸銅品事業は、資源循環ループにおける顧客との接点として重要な役割を担います。顧客発生スクラップの循環利用を推進し、合金リサイクル技術の高度化を目指します。さらに、付加価値の高い銅合金の開発や、データセンター向けなど新分野の開拓を進めます。
H.C.Starck社において、リサイクル量を1.5倍に拡大する設備投資や、米国内リサイクル拠点の新設を検討しています。集荷面では、E-Scrap集荷ルートの活用や、超硬製品事業での使用済み製品の回収強化を図ります。2030年度までに、欧州・米国・アジア・日本でリサイクル率100%体制を目指します。また、超硬製品向けの安定供給とあわせ、電子部品向けタングステン粉など高付加価値製品の拡販を推進します。
超硬製品事業:
タングステンの資源循環では、各国の販売会社で使用済み製品の回収を強化します。抜本的構造改革として、生産体制の最適化による固定費圧縮を図ります。
販売面では、航空・宇宙・医療・半導体分野に、より高付加価値な製品とソリューションの提供を進めます。地域戦略としては、インドを起点とした拡販を推進します。
高機能製品事業:
高機能製品事業では、事業内ポートフォリオの組み換えによる資本効率の最適化を実行します。
半導体、xEV、ヘルスケア領域への高付加価値な製品とソリューションの提供、事業内横断の開発推進などにより、収益性と資本効率の向上を目指します。
資源事業:
銅精鉱の安定調達や既存権益の収益性向上に努めます。
マントベルデ銅鉱山では、プラント処理能力の拡張計画を進めており、当社銅鉱石処理量に対して持分銅量比率を拡大することで、低TC/RCによる減益影響の緩和を図ります。また、コバルト、スカンジウム等の副産有価元素の回収技術開発にも取り組んでいます。
再生可能エネルギー事業:
脱炭素社会の実現に向けて、自社消費電力量相当の発電量達成を長期的な目標とし、地熱を中心に新規開発地点の開拓を進めます。
人事戦略:
資源循環ビジネスのグローバル展開に対応した人材の採用・育成・配置を戦略的に実現します。抜本的構造改革を進める中で、生産性と資本効率を高める変革を推進できる人材を後押しし、当社グループ全体の共創と成長を生み出す基盤づくりを進めます。
開発戦略:
サーキュラーエコノミー、GHG削減分野において、新規事業や新技術の創出を目指します。
生産技術開発:
競争力を高め、継続的なイノベーションを支援するために、ものづくり力、エンジニアリング力の強化を図ります。
デジタル戦略:
グローバル標準のIT基盤やセキュリティ強化、AI活用の加速により資源循環ビジネスの拡大に貢献します。