親水撥油技術

集合写真

見たことありますか? 「親水・撥油」現象

偶然発見した現象を、長年培ってきた技術・ノウハウと開発者の探究心で比類なき特性を示す物質にまで磨き上げ、更に具体的なソリューションの提案に挑戦する開発者へのインタビューです。
写真左より:神谷、今井、魚谷、白石、坂谷、腰山

油滴の実験水による油汚れの除去
(開発品を塗布したPETフィルムの事例)

フィルタの実験油と水の分離
(開発品を塗布したフィルターの事例)

近年は食材の焦げ目が印象的に仕上がる昔ながらの鉄製フライパンも見直されていますが、食材が焦げ付きにくく、手軽に洗えるフッ素樹脂がコーティングされたフライパンは、既に一家に一枚ある定番の調理器具なのでは無いでしょうか?

しかし、そのようなフライパンを初めて見たときは大変驚いた記憶があります。当時は、これほど水も油も玉のようにはじく現象を見たことが無かったからです。このような水も油もはじく特性を「撥水・撥油」と呼ぶそうです。

それでは、「親水・親油」「撥水・親油」「親水・撥油」という特性は存在するのでしょうか? 実は水になじんで油をはじく「親水・撥油」は特異的な特性で、実用レベルでこの特性を発揮し「親水撥油剤」として製品化しているのが当社電子材料事業カンパニーの三菱マテリアル電子化成㈱です。

早速、このユニークな「親水撥油剤」の経緯を開発者の皆さんから聞いてみたいと思います。

Hydrophilic_OleophobicHydrophilic_Oleophobic

初めは「あり得ない」と思った

──親水撥油剤に着目した背景を教えてください。

魚谷 当社は長年培ってきた電解フッ素化技術を核に様々な機能フッ素製品を製造販売しています。当初は撥水撥油剤や、界面活性剤について研究していました。既存のフッ素製品のレベルアップを図っていたんです。

神谷 当時の材料開発の過程で、親水撥油特性が認められるとの結果、正直「そんなことあるのかな?」と思いました。

──社内ではすぐに認められたのですか?

一同 いやいや、中々信じてもらえなかった。「そんなことあるの?」という反応でした。

神谷 それでも色々検証実験してみたら、あれ、なんか本当っぽいなと。

腰山 確かに材料そのものに親水撥油の特性があることがわかり、実際に何が作用しているのかを突き止めていきました。

──きっかけは偶然ですが、その裏付けをしっかりとって応用につなげることができたんですね。

白石 そうですね。特異なデータを見逃すことなくその新規性に着目して、現象の解析、再現試験と検証を繰り返しました。
その結果、高い撥油性を有するフッ素基に、水になじみやすい機能をバランスよく結合させた化合物に高度な親水撥油特性を発現することが分かりました。
「新しい材料の発見じゃないか?」、「唯一無二のユニークな新製品を生み出せるかも!」と一同、意気があがったことを今も覚えています。

このユニークな特性をどのように活かすか

今井 それを契機に当社と三菱マテリアル社とで協働プロジェクトを立ち上げて、当社は材料の研究開発、三菱マテリアル社はマーケティングの強化・発展というようにそれぞれが効率的に役割を分担しつつ、有機的なチームとして一丸となって「このユニークな材料を世の中に送り出そう」ということになりました。私もそのときに本格的に参画したんです。

──親水撥油の特性をもつ原料だけ販売をするということにはならなかったのですか?

今井 やはりコア技術だけ押さえてもなかなかビジネスにつながらないというのが現実です。社会のなかでどのように役立つ製品とするかという視点もなければ意味の無い研究になってしまいます。
そこをマーケティングチームと熟考を重ね、アプリケーションの主軸として「油水分離」と「防汚コート」のソリューションを提供することにし、早急にプレス発表をすることになりました。

腰山 新機能のインパクトをいち早く世に問うという方針のもと、プレス発表(http://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2014/14-1008.html)や展示会の日程だけが早々と決まり、そこまでに何とか素材をPRできるサンプルを作る必要がありました。「何とかプレス発表の日までに間に合わせなければいけない」というプレッシャーとの戦い。開発陣の血のにじむような努力の結果、予定どおり無事にプレス発表に間に合い、「やればなんとかできる」と自信につながりました。

お客さまの利用シーンに密着した研究開発

──プレス発表やテレビ放映の影響はいかがでしたか?

今井 プレス発表の反響にも増して、やはりテレビ放映の影響がすごかったですね。展示会でも好評で、非常に幅広い業種から問い合わせがありました。分野で言うと、飲食店関係や工場など油を多用する企業が多かったです。

──何れの企業も現在の主なお客さまである自動車や半導体産業とはかけ離れているように思います。更に具体的なニーズはどのように開拓しているのですか?

白石 自ら現場に行ってお客様の悩みを伺っていますね。「こういう塗料があればいいのに」とニーズが具体的なので、ハードルは高いですがダイレクトに開発に活かせる点が良かったですね。また、サンプルをお客様の所へもっていき、自ら厨房に塗料を塗って検証させてもらいました。「これじゃ使えないな」、「冷蔵庫に全然油が付かなくなった」、「一週間経っても全然油が付かない」と現場の声を聞ける機会は開発にとって貴重なものでした。「つくるだけ」から「売れるもの」、さらに「喜んでもらえるもの」。それに加え「世の中に普及するもの」というように開発における意識が変化していきました。

アプリケーションの評価中アプリケーションの評価中

みんなが知っている特性、ブランドにしていきたい

──新規製品である親水撥油剤やその特性自体が一般的に認知されていない中、皆さんが様々な工夫、苦労をして新市場にチャレンジしていることが分かりました。最後に、この事業の将来像や野望について伺いたいです。

魚谷 この製品は高い油水分離機能を持っているので、海難事故などによる海洋の油汚染対策に使われるようになって欲しいと思います。

坂谷 私は油水分離フィルターに携わっているので、その機能が有効に幅広く活用されて欲しいですね。「エフロンティア」というブランド名もできましたので、皆さんが油水分離といったらエフロンティアだねと言っていただけるようにしたいです。

神谷 まずはひとつの分野でも構わないので、エフロンティアがスタンダードになるようにしたいです。どうすればそこを見出だすことができるのかをずっと考えています。

腰山 この材料の特性には多くのお客さまから注目頂いている一方で、耐久性に対するニーズも高いんですよね。例えばですけど1万回擦っても耐えうるものとか、極端ではありますが将来のターゲットとしたいですね。
あと、自社製品に「撥水・撥油」といった機能に加えて「親水・撥油」という機能の選択肢が増えたことも重要だと思っています。表面の機能についてご提案の幅が広がったことを事業の発展や社会貢献につなげて行きたいです。

白石 やはり、この新規製品を事業の柱になるよう発展させたいですね。現在は当社の製品は自動車や半導体市場向けが主流ですが、この製品で住宅設備などの新規市場に挑戦していることもあり、もっと幅の広い事業ビジョンを描いてみたいです。

今井 住宅設備の話題がでましたが、目指しているのは「人が暮らしている空間をきれいに、快適にする」ということなんでしょうね。
排水処理を適切に処理する「油水分離」機能、洗剤を使わず表面をきれいに保てる「防汚コート」機能はその方向性と合致していると思います。
幸い表面に機能を付与するという技術は当社の強みだと確信しています。さらに強みを伸ばして、人に喜んで頂ける、社会に貢献できる、地球環境への負荷を低減する製品開発、ソリューション提案を進めていきます。

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