次世代めっき技術

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次世代めっき技術開発への挑戦

「めっき」は、装飾品の見た目の美しさを向上させるだけでなく、スマートフォンや自動車など、デバイスや部品の機能・性能を向上させる要素技術として進化してきました。最先端のモノづくりに貢献する「次世代めっき」技術の開発ストーリーを紹介します。
写真左より:西村、久保田、玉川

私たちの身近なモノの多くに「めっき」技術が使われていることをご存知でしょうか?

例えば、自動車。
「めっき」は、自動車の外装品や内装品に用いられるのはもちろんですが、電装部分にも使用されています。その1つが、電子・電気機器をつなぐ電線、ワイヤーハーネスです。電力やセンサーからの信号を伝送し、動力や制御などへ導く重要な役割を担っています。ワイヤーハーネスは、人間の血管や神経のように、車体内部に無数に張り巡らされています。そのハーネスの先端には端子・コネクターと呼ばれる電気機器との接続部品があるのですが、その端子・コネクターに「めっき」技術が使用されているのです。

今回は、三菱マテリアルグループが連携して開発に取り組む「次世代めっきプロジェクト」のメンバーに、そのテーマの一例である防食めっき、PICめっき®について語っていただきました。

自動車の環境性能向上の一翼を担う次世代めっき

──まずは次世代めっきプロジェクトについて教えてください。

久保田 開発ストーリーの合金開発技術で紹介された「FAST(Future Alloy Strip)」は銅と銅合金のプロジェクトでしたが、次世代めっきは、そのあとに開始されたプロジェクトになります。FASTは、主に自動車に搭載される新しい銅合金を開発しましたが、より付加価値を高めるため、新しく開発された銅合金の上に使用する、高機能な次世代のめっきを開発しようというのが今回のプロジェクトの主旨です。
メインテーマは、現在も開発を進めている防食めっき。さらに、プロジェクト開始以前に開発し、現在は量産段階に入っているPICめっき®もテーマとして組み込まれています。

防食めっき端子付き、Alワイヤーハーネス

──それぞれどんな特徴があるのでしょうか。

玉川 現在、自動車は、燃費向上が期待できる車体の軽量化に視点を置いて開発されています。その取り組みの1つが、電線を、従来の銅からアルミニウムに置き換えるというものです。アルミニウム電線に変わるだけで、重さが銅線の半分になり、車体の軽量化は燃費向上によるCO2削減に直結し、地球環境への貢献へとつながっていきます。ただ、アルミニウム電線にした場合、端子との接合部分でガルバニック腐食が起き、接続信頼性が悪化してしまうという問題がありました。これを解消するために開発したのが防食めっきです。

PICめっき®も、防食めっきと同じように、電線の端子に使用するものになります。こちらも、自動車の車体軽量化の影響から端子の小型化も進み、さらに電装化の加速も加わって、現在、端子の数がどんどん増えています。自動車を組み立てる際、作業者が手で端子コネクタを挿入するのですが、その端子のサイズが小さいほど、挿し込みの摩擦抵抗が上がり、その結果、作業者が腱鞘炎になりかねないという作業環境上の問題がありました。そこで、今までの端子に求められる要求特性は維持したまま、人的負荷を減らすため、滑らかに挿し込みできるようにしたのがPICめっき®です。

久保田 どちらのめっきも、お客さまの要望から開発がスタートしました。
研究所では、主担当の研究員が主体的にお客さまのニーズを満たすものを探索し、研究を進めます。その研究成果が、お客さまの求めるものと合致するとプロジェクト化され、生産技術開発も含めて本格的な開発へと進んでいくのですが、両めっきもその道筋をたどって研究・開発が進みました。ただ、当然ですが、どちらも世の中に無い革新的なめっきなので、最初はお客さまだけでなく研究所内でさえも「実現可能なのか」と疑いの目がありましたね。

※ガルバニック腐食:異種の金属が電解質溶液を介して接触したとき、各金属の腐食電位の違いを駆動力としてガルバニック電流が流れ、金属が腐食される現象。

玉川玉川

お客さまとタッグを組み「ベストなめっき」を目指す

──開発において苦労したことを教えてください。

久保田 防食めっきは、発案以降、画期的な防食効果が表れるのを証明して周囲に納得していただくことに難しさを感じています。さらに、前例のないめっき製品をいかに量産へつなげていくのかというプロセス開発も難しいところで、苦労の連続です。

西村 お客さまが求めるめっきの特性を想定して研究開発しているのですが、実際に使用する段階になると、お客さまごとの多種多様なアイテムに合わせてチューニングしていかなくてはなりません。実験結果も、お客さまのアイテムにめっきしてからでないと得られないので一筋縄ではいかず、難しいことも多々ありますが、「使用していただく」ことを一番に考えて日々取り組んでいます。また、実際のアイテムを使用して開発を進めていくので、お客さまとの連携も欠かせません。

玉川 PICめっき®も、採用実績ができるまではいろいろと苦労しました。
プロジェクトメンバー同士で意見を交わし、意思疎通を図ることが重要と考え、現在も取り組んでいます。

西村西村

社会に出す。その想いがプロジェクトへつながった

──グループ会社の垣根を越えて開発を進め、最終的にはお客さまの協力も得て、製品化に向けて進めている印象を受けました。

久保田 FASTと同様、研究者とお客さまとの間を、営業担当の皆さんに取り持っていただくことで、お客さまのニーズを直接把握することができています。今後は、何としても量産ベースに乗せていきたいです。
そもそも「プロジェクト」には「横串を刺す」という意味合いがあります。研究所内の1つの組織で開発を進めるのではなく、研究所内のほかの組織ともつながり、さらにグループ会社までが一体となって進めることで、開発スピードを上げ、製品化まで行っていくのが、私たちがイメージする「プロジェクト」像です。

久保田久保田

──最後に、今後の展望をお聞かせください。

玉川 まずは、防食めっきをお客さまに認定していただけるよう取り組んでいきます。そして、将来的には、PICめっき®、防食めっきに続く「次世代めっき」技術を増やし、社会に貢献していきたいです。

西村 現在は「めっき」に関する業務に関わっていますが、めっき以外も含めて、お客さまから要望が出たときにはすぐに提案できるよう、研究員として日頃からニーズを広く先読みし、開発していきたいと思っています。
「次世代めっき」プロジェクトでは、グループ会社との連携をより深め、製品化に向けた技術的検証をしっかり行っていきます。

久保田 最終目標は、製品化し「社会に出す」こと。企業の研究者として論文は出せても製品にならなければ意味がありません。量産につながる設計をし、社内外をうならせる製品を開発していきたいです。突拍子もないアイデアを、世界を変えるような技術として形にしたいと考えています。

めっき

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