天候に左右されることなく、CO2排出量を抑制しながら電力を安定供給できる。こうした特長から地熱発電は近年、注目を集めている再生可能エネルギーの一つだ。三菱マテリアルは、グループ力を結集しておよそ50年にわたる地熱開発・発電事業に取り組み、発電量の拡大に取り組んできた。その一つのプロジェクトが、岩手県で進めている『安比地熱発電所プロジェクト』である。三菱マテリアルをはじめとする3社の共同出資で設立した安比地熱株式会社の管理運営により、2024年度に安比地熱発電所の運転を開始し、14,900kWの出力(一般家庭約3.6万世帯分を賄う電力、安比地熱発電所の位置する岩手県八幡平市の世帯数は1.1万世帯)を予定している(※)。
A.Tが掘削部門のリーダーとしてプロジェクト参加の打診を受けたのは、10年間の海外勤務を終え、本社で澄川地熱発電所(秋田県鹿角市)の操業サポートに携わっていた2019年のこと。入社以来、キャリアの半分以上を地熱事業と共に歩んできたA.Tにとって、新たな任務は、とても魅力的なものだった。地熱発電は、地下にある約300℃の地熱貯留層より地熱流体を取り出し、そこから分離した蒸気を用いてタービンを回して発電する。そのために、生産井(蒸気を取り出す井戸)と還元井(蒸気復水や熱水を地下に戻す井戸)を掘るのだが、安比地熱発電所では合計7本の井戸を掘削することが計画されていた。
PROJECT STORY06
地下の「暴れん坊」を掘り当て
クリーンエネルギーを未来へ。