プレスリリース

2025年9月25日

三菱マテリアル株式会社

高強度銅合金「MSP®5-ESH」を新たに開発
~ベリリウム銅・チタン銅に代わる世界最高水準のCu-Mg系合金~

三菱マテリアル株式会社は、車載用電気部品などに適した新しい高強度銅合金「MSP®5-ESH(Extra Spring Hard)」を開発しました。本製品は、マグネシウムを主成分とする固溶強化型(*1)銅合金であり、従来の高強度銅合金に比べて、製造性・性能・環境負荷の面で優れたバランスを実現しています。

■開発の背景と目的

当社が2021年より量産を開始した「MSP®5」は、高濃度マグネシウムを含有することで、強度・導電率・成型性を高いレベルで両立した銅合金です。ベリリウムなどの希少元素を使用せず、コスト面でも優位性があり、車載用小型端子材として高い評価を得てきました。
このたび開発した「MSP®5-ESH」は、同シリーズの高強度タイプであり、従来ベリリウム銅やチタン銅が使用されていた領域への代替を可能にする性能を備えています。これら従来材は、析出強化型(*2)であるがゆえに複雑な熱処理工程を必要とし、製造コストや品質安定性、環境負荷に課題がありました。「MSP®5-ESH」は、固溶強化型の特性を活かし、これらの課題を解決します。

(*1)
母相(溶媒原子)の中に別の原子(溶質原子)を溶け込ませること(固溶)により、材料を強化する手法。
(*2)
固溶後、母相(溶媒原子)の中で別の原子(溶質原子)を析出させることにより、材料を強化する手法。
図:MSP5と他合金との特性比較 図:MSP5と他合金との特性比較 (画像をクリックして拡大イメージを表示)

■技術的特長

  1. 高強度・高導電率の両立
    「MSP®5-ESH」は、引張強さ約900MPa、導電率43%IACSという、銅合金としては世界最高水準の性能を有しています。これは、ベリリウム銅(C1720-1/4HM)やチタン銅(C1990-1/4HM)と同等の強度を維持しながら、導電率はそれぞれの約2倍、約4倍に達します。電気特性と機械特性の両立は、車載部品の信頼性向上に寄与することに加え、部品の小型化、銅材料の使用量削減にも貢献します。
  2. 優れた成型性
    高強度材料は一般に加工時の割れが懸念されますが、「MSP®5-ESH」は端子の箱曲げ性に優れ、最小曲げ半径R=0の加工にも対応可能です。また、プレス打抜き性にも優れ、寸法精度が高く、バリの発生が少ないため、量産性にも優れています。
  3. 環境負荷の低減
    固溶強化型である「MSP®5-ESH」は、析出強化型に比べて製造工程がシンプルで、複雑な熱処理を必要としません。これにより、製造時のCO2排出量を抑えることができ、環境負荷の低減に貢献します。

三菱マテリアルグループは、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことを「私たちの目指す姿」と定めています。今後も新たなマテリアルを創造し、オンリーワンの高機能素材・製品供給を行うことで、目指す姿の実現に取り組んでまいります。

【関連情報】

2024年4月18日プレスリリース
令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において科学技術賞(開発部門)を初受賞
URL:https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2024/24-0418.html

2021年4月21日プレスリリース
車載用小型端子向け銅合金「MSP®5」の本格生産開始
URL:https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2021/21-0421.html

銅加工事業WEBサイト、「MSP」シリーズ紹介ページ
URL:https://www.mitsubishi-copper.com/jp/products/materials/msp/

以上

<本件に関するお問い合わせ>

広報室:03-5252-5206

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