プレスリリース

2025年6月25日

三菱マテリアル株式会社

世界最高水準の結晶粒成長抑制性能を実現した無酸素銅
「MOFC®-GC(Grain Control)」を開発
~1000℃の熱処理後も微細で均一な結晶組織を維持~

三菱マテリアル株式会社は、高性能無酸素銅MOFC®(Mitsubishi Oxygen Free Copper)シリーズの新製品を開発し、ラインアップを拡充しました。新開発のMOFC®-GC(Grain Control)は、熱処理時の結晶粒の粗大化が極めて起こりにくい、新しい無酸素銅(*1)です。

自動車の電動化や再生可能エネルギーの普及により、電子機器部材には大電流に対応するために高導電率や高放熱性能が求められています。このことから、優れた導電率と熱伝導率を有する無酸素銅は、急速に需要が拡大しています。xEVなどにおいて電力制御や変換に用いられるパワーモジュール(*2)では、半導体素子から発生する熱を放熱するためにAMB(Active Metal Brazing)基板(*3)などが用いられていますが、その多くは回路層に無酸素銅を採用しています(図1参照)。
AMB基板を製造するためには、セラミックスと無酸素銅の加熱接合が不可欠です。しかし従来の無酸素銅では、接合工程における熱処理による銅の結晶粒の粗大化や不均一組織の生成など、AMB基板の品質ばらつきや性能へ影響を及ぼす課題がありました。

図1:AMB基板の製造工程イメージ図1:AMB基板の製造工程イメージ (画像をクリックして拡大イメージを表示)

このためAMB基板を構成する無酸素銅には、加熱しても結晶粒が粗大化しにくい特性(結晶粒成長抑制性能)が求められており、特に近年では多様な接合条件に対応できるように、幅広い温度域においても結晶粒の粗大化を起こしにくい、高度な結晶粒成長抑制性能を備えた材料が必要とされています。
この要求に対し当社は、長年培ってきた高品質な無酸素銅の製造技術と独自の材料設計および特許取得技術を駆使することで、熱処理後においても結晶粒径が微細かつ極めてばらつきが少なく均一な結晶組織を実現する無酸素銅MOFC®-GCの開発に成功しました(図2参照)。

図2:新開発のMOFC®-GCと従来の無酸素銅との結晶組織画像比較

図2:新開発のMOFC®-GCと従来の無酸素銅との結晶組織画像比較(注)
(注)結晶組織比較のため、銅回路材料のみを変えて同一接合条件で作製した
AMB基板(当社試作品)の各銅回路表面の光学顕微鏡写真
(画像をクリックして拡大イメージを表示)

MOFC®-GCは従来の改良型の無酸素銅でも達成できなかった1000℃の加熱に対しても微細で均一な結晶組織を安定的に保てることを確認しており(図3参照)、極めて高いレベルで結晶粒粗大化の抑制が可能です。
また高度な結晶粒成長抑制性能を有しながら、導電率や熱伝導率についても高い特性(*4)を有していることから、各種電子部品・モジュールにおける品質向上と工程安定化に貢献します。

図3:新開発のMOFC®-GCの各種温度域での熱処理後の結晶組織図3:新開発のMOFC®-GCの各種温度域での熱処理後の結晶組織(*5) (画像をクリックして拡大イメージを表示)

MOFC®-GCは0.3mmから1.2mmまでの幅広い板厚での提供が可能で、AMB基板などのセラミックス基板の回路層の材料に採用することで、以下のような効果が期待できます。

  • 光学認識性の向上
  • 表面粗さの低減(平滑性の向上、ばらつき低減)
  • めっき外観改善
  • 銅回路層/セラミックス接合界面の超音波画像検査性の向上
  • 基板の反りの安定化
  • 耐ヒートサイクル性能の向上
  • ワイヤーボンディング接合強度不足の解消(細径ワイヤ使用時など)
  • 半導体素子のはんだ付けや焼結材接合のばらつき低減

当社グループは、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことを「私たちの目指す姿」と定めています。今後も新たなマテリアルを創造し、オンリーワンの高機能素材・製品供給を行うことで、目指す姿の実現に取り組んでまいります。

(*1)
酸素(酸化物などの)含有量が極めて低い、純度99.96%以上の銅のこと。MOFC-GC®についてCopper Development Association(CDA)へ登録申請中。
(*2)
xEVなどにおいて電力制御や変換に用いられる、複数のパワー半導体(IGBTやMOSFETなど)や駆動回路、保護回路などを1つのパッケージに組み合わせたモジュールのこと。
(*3)
Active Metal Brazing(活性金属接合)基板の略称。銅板(回路層)とアルミナ(Al2O3)や窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)などのセラミックス(絶縁層)とを、活性金属を含むろう材で接合した電子部品(セラミックス基板)のこと。
一般的にDCB(Direct Copper Bonding)と呼ばれる銅板とセラミックスを直接接合したセラミックス基板に比べ、温度サイクル試験などに対して信頼性が高い。
(*4)
銅材料の中で最も高い導電率(101%IACS)、および熱伝導率(391W/m・K)を有する無酸素銅C10200と同程度。
(*5)
銅板単体を大気雰囲気で昇温速度10℃/min、保持時1hrの条件で焼鈍した後の観察結果。

【関連リリース】

2021年9月27日
世界最高水準の強度と耐熱性、無酸素銅「MOFC®-HR」(HR: Heat Resistance)を開発
URL:https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2021/21-0927.html

【関連情報】

WITH MATERIALS
MOFC-HRってどんなソザイ? - WITH MATERIALS

以上

<本件に関するお問い合わせ>

広報室:03-5252-5206

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