2024年8月21日
三菱マテリアル株式会社
三菱マテリアル株式会社は、高平坦度かつ低表面粗さを実現した世界最大級の四角形状のシリコン基板「角型シリコン基板」を開発しました(図1および表1参照)。
近年注目を集めているチップレット技術を採用した次世代半導体パッケージ(*1)は、100mm角程度まで大型化が進んでいます。半導体パッケージの製造工程において、半導体チップを配置するキャリア基板に従来のφ300mmシリコンウェーハなどを利用するWLP(Wafer-Level-Package(*2))では、ウェーハの面積が小さく円形状であるため、効率よくパッケージをウェーハ基板に収められないことが課題となっています。
この課題を解決するため、当社は、従来から当社グループで培ってきた大型シリコンインゴットの鋳造技術と、当社独自の加工技術を組み合わせた大面積かつ四角形状の「角型シリコン基板」を開発しました(図2参照)。
「角型シリコン基板」は、半導体製造工程におけるキャリア基板としての活用や、半導体パッケージのインターポーザー(*3)材料としての適用など、半導体分野における生産性向上に貢献します。
当社グループは、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことを「私たちの目指す姿」と定めています。今後もオンリーワンの高機能素材・製品供給を行うとともに、お客様のご要望に合わせた最適なソリューションを提供することで、目指す姿の実現に取り組んでまいります。
近年のクラウドサービスやAIの普及に伴い、サーバー用CPUやGPUが高性能化する中、「チップレット」と呼ばれる技術を用いた次世代半導体パッケージの採用が増加しています。
従来の半導体が大規模な集積回路を1つのチップ内に造り込むのに対し、チップレットでは、複数の半導体チップを分けて製造し、それぞれを組み合わせて1つのパッケージに収めます。半導体チップ間は、シリコンインターポーザーや、銅と樹脂からなる再配線層(RDL:Redistribution Layer)を形成して繋いでいます。(図3参照)
これらのパッケージサイズは、100mm角程度まで大型化が進んでいます。キャリア基板上に効率よくパッケージを収めるためには、キャリア基板を四角形状かつ大型化する必要があります。しかし単結晶のシリコン材料から大型の基板を作ることは技術的に困難であることから、キャリア基板に大型のガラスパネルなどを利用したPLP(Panel-level-Package(*4))が開発されています。ただしガラス材料は剛性が低く、熱伝導率も低いため、RDL形成の際の加熱工程における偏熱や熱収縮により、反りが発生することが課題となっています。
新規開発した「角型シリコン基板」をPLPのキャリア基板として用いた場合、その特徴である高剛性、高熱伝導により、課題であったRDL形成工程における反りも改善できることを確認しています。(図4参照)
これらの特性を生かし、今後、「角型シリコン基板」は半導体分野において幅広い活用が期待されます。
表1:新規開発した角型シリコン基板の概要
材料 | 高純度シリコン | |
---|---|---|
適用サイズ (角型) |
外形 | 300mm×300mm 510mm×515mm 600mm×600mm、 ほか |
厚み | >0.8mm | |
寸法公差 (外周) |
外形 | ±0.2mm |
厚み | ±0.05mm | |
TTV(平坦度) | <10μm(実験値) | |
表面粗さ | Sa | <2nm(実験値) |
Sz | <50nm(実験値) |
(注)上記の値は代表値であり、仕様ではありません。
以上
コーポレートコミュニケーション室:03-5252-5206