2024年1月 4日
三菱マテリアル株式会社
執行役社長 小野 直樹
2024年の年頭にあたり、新年のご挨拶を申し上げます。
1月1日に石川県能登地方を震源とする大きな地震が発生しました。まず、この地震で亡くなられた方々に哀悼の意を表します。また、年末・年始に実家などに帰省していた方もいらしたかと思います。被災者の方をはじめ、年初から困難な状況に遭遇された皆さま方に心からお見舞い申し上げます。
ボーイスカウトのモットーでもある、「備えよ常に(Be Prepared)」は私自身もメッセージの中で、「リスクに敏感になり備えよ」として引用しています。
「いつなんどきも、いかなる場所で、いかなることが起こった場合でも善処できるよう、常に準備を怠ることなかれ」という意味です。今回のような大きな災害においては、備えがあれば全てを完璧に防ぐことができたとは言えないでしょうが、備えがあれば被害を軽減、善処はできたかもしれません。
一方で、羽田空港で起きた航空機事故において、乗員・乗客全員が無事に脱出することができました。これは客室乗務員の方々の日頃の備え・訓練が功を奏したと言える事例ではないでしょうか。
今年、2024年は台湾総統選挙、インドネシア、ロシア、メキシコ、アメリカで大統領選挙が行われます。多くは私たちのビジネスともかかわりの深い国で、選挙の結果とその後の政局の変化を注視する必要があります。この意味でも、備えをしておく必要が高まる一年となりそうです。
最近はこうした地政学的リスクだけでなく、経済のブロック化など、世界の動きに対しても備えをしておく必要があります。
さて、昨年の年頭の挨拶では、「勝ち」にこだわろうということをお話ししました。スポーツ界では昨年日本は、WBCでの優勝、バスケットボール、バレーボール、ハンドボールの男子がいずれもパリオリンピック出場権を獲得しました。それらの戦いにおいて、いずれも勝ちに強くこだわる姿勢を見ることができました。
バスケ、バレー、ハンドの団体球技については、共通点があります。それは、いずれも監督・コーチに外国人指導者を迎えていること、海外のチームで活躍する選手が増えていることです。
日本人以外の指導者を迎えるのは、日本がこれまでのやり方から脱して、新たな方法を学ぼうということにほかなりません。日頃から、私のメッセージとして伝えている「身内の論理から抜け出す」ことを実践する一つの方法になります。従来の方法に拘らず、新しい方法、やり方をどん欲に学び、実践したからこそ結果を出すことができたのかもしれません。変化を恐れずというより、むしろ変化をしなければ、世界で戦えないといった切迫感があったのかもしれません。その過程では、従来と違うことをすることに対する抵抗感もあったでしょうが、個々の選手が、そしてチームが成長したい、勝ちたいという気持ちが強く、その抵抗感を打ち破ったのだと思います。
また、海外で活躍する選手がもたらす影響も大きいものがあります。一流の世界ではこんな風であるということに大きな刺激を受けていることと思います。これらは、先行して強化が進むサッカー界に学ぶところが多いのかもしれません。サッカー界では指導者は日本人に回帰する一方、代表選手のほとんどは海外のリーグで活躍する選手となっています。これが将来の進化の形なのかもしれません。
この話で重要なポイントは学ぶということです。どんなにいい話をされても、それは自分たちに関係ない、自分たちのやり方とは違うからと言って、聞く耳を持たない限り、学びを得ることはできず、自ら成長の機会を放棄することになります。
多様性のある社会への変革が求められていますが、多様な人材、多様な考え方をもった者が集まるだけでは全く意味がないと考えます。多様な意見に耳を傾け、そこから取り入れるべきものを学ぼうとする態度がない限り、単なる毛色の異なる烏合の衆に過ぎません。
完成された人間などは存在しないと私は思っています。その意味では、成長のための学びはどこまでも継続するものであり、その姿勢があれば人は成長し続けられるものです。
私たちは、今年度、中期経営戦略2030を策定、公表し、その実行に向けた取り組みをスタートしました。また、今年度から予算の考え方も大きく変え、設定した目標値に対するギャップを常に測り、そのギャップを埋める方策をとことん考えていこうという形にしました。ここまでの経過では、必ずしもギャップを全て埋めることができたわけではありませんが、少なくともこのやり方から得た学びは多くあります。これまでにはなかった施策が打ち出されたり、これまでならば市場環境が悪いからと諦めが先行しもっと業績が悪化するところを一定程度踏みとどまることができたり、皆さん方の真摯なこの努力は会社全体にとっての学びとなり、必ず今後の会社としての成長につながるものと信じています。
今年2024年も新しい人材が加わり、これまでにないものの考え方をトライしたり、会社全体として多くの新しいことに挑戦していきたいと考えています。
是非、皆さんにはこれまでと違うやり方、意見であっても聴く耳をもち、好奇心をもって試してみる、そのうえでそこから何を学び、自らの、そして会社組織としての成長にどうつなげるかに挑戦していく一年としてもらいたいと思います。
以上
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