三菱マテリアル

プレスリリース

2018年1月15日

世界で初めて洗浄工程を必要としない金錫合金ペーストを開発

三菱マテリアル株式会社(取締役社長:竹内 章、資本金:1,194億円)の電子材料事業カンパニーは、世界で初めて洗浄工程を必要としない金錫(AuSn)合金ペースト(以下「新製品」)を開発し、サンプル出荷を開始しましたので、お知らせいたします。

金錫合金の粉末とフラックスと呼ばれる結合材(バインダー)を混合した練り物である金錫合金ペーストは、従来品を含めて次の特長を有しています。

1.
金錫合金自体が一般的な鉛フリーはんだよりも高い融点(280℃)を有し、高い熱伝導性と接合後の信頼性に優れていることから、高輝度LEDのダイボンディング※1材や水晶デバイス※2などのパッケージの気密封止蓋※3の接合材などの様々な用途で使用可能。
2.
ペースト状態であることでスクリーン印刷※4・ディスペンス塗布※5・ピン転写※6などの工法への応用度が高く、様々な形状の接合部にスピーディに使用可能。

こうした金錫合金ペーストを用いた接合では、金錫合金の粉末表面及び接合面の酸化膜を除去することにより、粉末表面と接合面との濡れ性(溶けた金属が固体上で弾かずに広がる性能)を高めることが必要ですが、従来品ではこの酸化膜除去の役割は高耐熱ロジン(松やに)をベース剤としたフラックスが担っていました。しかし、このフラックスが高耐熱であるため、熱処理(リフロー)工程後に接合面の腐食等の不具合の原因の一つとなる残渣が発生するため、これを除去する洗浄工程を必要としておりました。

しかし最近では、熱処理工程においてギ酸による還元雰囲気(ギ酸により還元がしやすくなった空間)を作る装置がお客様側で普及し、金錫合金の粉末表面の酸化膜除去が可能となりました。そこで、このたび開発した新製品は、お客様のニーズにあった熱分解温度が低い新規フラックスを用いた金錫合金ペーストの開発により、従来の特長に加えて、次の特長も有することとなりました。

1.
熱処理後のフラックス残渣が劇的に低減され、洗浄工程が不要となった。
2.
低温下でフラックスが速やかに分解されることにより、金錫合金の粉末表面の酸化膜の除去にかかるギ酸による還元効果を最大限に向上。

この結果、より高い接合率(被搭載物の接合面積に対する金錫合金の濡れ面積)の効果による接合信頼性の向上が見込まれると同時に、熱処理後の洗浄工程を必要としない新製品の開発に世界で初めて成功しました。

また、従来品のフラックスに含有していたハロゲン系活性剤は、ペーストの安定性に影響を及ぼしておりましたが、これを一切使用していないため、保証期間(ポットライフ)・有効使用期間が長いことも特長の一つとなっております。

新製品は、洗浄工程における専用洗浄剤及びその廃液処理にかかる費用と環境負荷の低減だけでなく、洗浄工程のスリム化による生産性の向上というお客様にとっての「うれしさ」を提供してまいります。

新製品は、1月17日から19日に東京ビッグサイトにて開催される「第47回 インターネプコン ジャパン —エレクトロニクス 製造・実装技術展—」でご紹介する予定です。特に高輝度LEDヘッドランプや殺菌用UV-C LEDランプなどの高い放熱性と接合後の信頼性を要求される用途へ積極的に展開し、2022年には年間25億円規模の売上げを目標としてまいります。

当社グループは、ビジョンの中で「ユニークな技術により、人と社会と地球のために新たなマテリアルを創造し、循環型社会に貢献するリーディングカンパニー」となることを掲げております。当社電子材料事業カンパニーは、今後も独自の技術を活かした製品開発により、社会の発展に貢献してまいります。

※1.
ダイボンディング
個片となった半導体素子(Die)を回路基板に接着剤を塗布して固着する工程。
※2.
水晶デバイス
水晶を素材とした音声情報等を送受信する電波の基となる基準信号を正確に安定して作り出しているデバイス。
※3.
気密封止蓋
気密性を十分に確保した電子部品収納用パッケージの蓋。
※4.
スクリーン印刷
マスクとスキージ(へら)を用いてペーストを一括平面塗布させる工法。
※5.
ディスペンス塗布
ペーストを注射器のような形状の容器に入れ、針のような先端部より、圧縮空気により吐出させる工法。
※6.
ピン転写
別名はんこ法、スタンピング法とも言われ、ピンの先端にペーストを付着させ、供給箇所に転写させる工法。
洗浄工程を必要としない金錫合金ペースト 洗浄工程を必要としない金錫合金ペースト (画像をクリックして拡大イメージを表示)
LED素子搭載例 LED素子搭載例 (画像をクリックして拡大イメージを表示)

以上

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