プレスリリース

2023年10月31日

三菱マテリアル株式会社
国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)

銅合金の特性予測モデルを構築

~三菱マテリアルのマグネシウム銅合金「MSP®シリーズ」優位性を裏付け~

三菱マテリアル株式会社(以下、「MMC」)と国立研究開発法人物質・材料研究機構(以下、「NIMS」)は、86元素を網羅する銅合金の特性予測モデルを新たに構築いたしました。本モデルを用いた両者の共同研究の結果、銅に添加する元素としてマグネシウム(Mg)が最も総合的に優れていることを明らかにしました。

MMCとNIMSは、NIMS-三菱マテリアル情報統合型材料開発センターを2020年に設立し、情報統合型材料開発システムの研究に取り組んでまいりました。このたびの共同研究はMMCの銅合金設計技術およびシミュレーション技術と、NIMSが得意とするデータサイエンスを利用した材料開発手法である「データ駆動手法」を融合させ、実現したものです。

安定性、コスト、安全性の観点でリアルでの実験が困難な銅合金に対して、シミュレーション技術とデータ駆動手法を組み合わせ、銅合金特性の予測精度を高めた特性予測モデルを構築し、銅に加えるさまざまな添加元素を比較しました。その結果、銅に加える添加元素としてマグネシウム(Mg)が最も総合的に優れていることを明らかにしました。これによりMMCのCu-Mg系固溶強化型合金「MSP®シリーズ」(*)の特性・品質の高さを示すことができました。

(*)
固溶強化:母相(溶媒原子)の中に別の原子(溶質原子)を溶け込ませること(固溶)により 材料を強化する手法。

三菱マテリアルとNIMSは、今後も組織間連携を深め、得られた成果の普及と活用の促進を通じ、日本の素材産業全体の国際競争力の強化に貢献してまいります。

【概要】

研究背景・内容

MMCは機械特性、電気特性のバランスに優れたCu-Mg系固溶強化型銅合金の「MSP®シリーズ」を開発し、製品展開を進めてきました。「MSP®シリーズ」の開発では、環境負荷の低い固溶プロセスを用いた製造法であり、従来型の合金である黄銅、青銅などと比較して優れた特性を持つこと、また、ベリリウム(Be)のような毒性を有していないことから、マグネシウム(Mg)の優秀性を確認していました。
しかし他にも優れた添加元素が存在する可能性があるため、今回は実験データ、物質特性予測計算式、データ駆動手法をコンピュータ上で統合し、原子番号1番の水素から86番のラドンまで全ての元素を対象とした、銅合金の特性予測モデルを構築しました。また本研究において、銅合金の機械特性と電気特性のバランスを評価する性能指数を新たに導出し、その大小で特性バランスを評価できるようにしました。

研究結果

下記図1は得られた特性モデルによる機械特性と電気特性の予測結果です。抵抗率の上昇を抑えつつ機械強度が上昇する図中の右下の方向が優れたバランスを示し、性能指数(図中のFOM(Figure Of Merit))が大きいほど優れた合金であることを表しています。

この性能指数を用いて、どの組み合わせの銅固溶合金が優れているかランキングを行ったところ、以下のような結果となりました。

図1. 銅固溶合金の機械特性と電気特性の関係 図1. 銅固溶合金の機械特性と電気特性の関係

上記の1位~5位までの合金は、高コスト元素(Ag、Au)や毒性元素(Cd、In、Hg)が含まれているため、特性バランス、コスト、安全性の3点を満たす銅固溶合金はCu-Mgであることが確認されました。

Cu-Mg系合金は、MMCの「MSP®シリーズ」として製品化されており、本製品の特性・品質の高さの裏付けとすることができました。また、本研究において、最もシンプルな合金である2つの元素から構成される銅固溶合金を想定し、周期表上のほぼ全ての元素を対象として網羅的な比較を行うことができたため、今後の銅固溶合金開発に向けて非常に有用な研究結果となりました。

<研究論文>

本研究については2023年9月に国際的な学術誌である、Science and Technology of Advanced Materials : Methodsに掲載されています。

タイトル
Comprehensive elemental screening of solid-solution copper alloys
MMC著者
Kenji Yamaguchi, Takuya Ishigaki, Yuki Inoue,
Shuhei Arisawa, Hirotaka Matsunoshita,
Yuki Ito, Hiroyuki Mori, Kenichiro Suehiro, Kazunari Maki
NIMS著者
Kenji Nagata, Masahiko Demura

以上

<本件に関するお問い合わせ>

三菱マテリアル
戦略本社 コーポレートコミュニケーション室
03-5252-5206

国立研究開発法人物質・材料研究機構
国際・広報部門 広報室
029-859-2026

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