09務めたので、阿部さんと働くのは2度目です。その後2020年に三菱マテリアルから安比地熱社に出向になったので、今回は異なる立場でプロジェクトに参加しました。阿部 佐々木さんとは出身大学も学部も同じなど共通点が多いこともあり、今ではすっかり気が置けない間柄です。佐々木さんといえば、消防署関連の手続きでも活躍してくれました。掘削工事の着工が1か月後に迫った2019年9月、他の発電所で実績のある掘削設備への燃料供給方法が地元の消防署から認められないという窮地に陥ったんです。佐々木 幸い2020年度の工事は工期が短く別の燃料供給方法で対応できたのですが、2021年度以降は長期工事が予定されていたため、地元の消防署と交渉が必要でした。私は消防署関連の手続き自体初めてでしたし、「このままでは掘削工法の見直しが必要になり、掘削会社の負担や当社のコストが大幅に増えてしまう、あるいは最悪の場合、工事が実施できなくなる」という焦りもありました。そこで足繁く消防署に通い、まずは相手の意向を理解することに努めました。また掘削会社とも協議を重ね、全関係者にとって最善の道を考え抜きました。その結果、3か月後に再提出した燃料供給方法の認可が下りた時は、大きな達成感が得られました。阿部 書面のやり取りだけでは人の心は動かせません。佐々木さんのひたむきさが、一度は失いかけた消防署の信頼を取り戻したのだと思います。本当に大変でしたが、よくやりきってくれましたね。佐々木 経験豊富な阿部さんのサポートがあったからです。ありがとうございました。あろう位置も予測し、その方向に掘り進めた結果、正確に掘り当てることができた時は心から安■しました。 それ以外にも、掘削会社との協議や工程管理、コスト管理など、やるべきことは多いのですが、関係者間で密にコミュニケーションを取り、円滑に進むよう努めました。――本プロジェクトを進める中で、お二人が直面された困難も教えてください。阿部 困難ばかりの4年間でしたが、特に大変だったのは井戸の掘削です。井戸1本につき約3か月かけて地下を掘り進めていくのですが、終盤は温度が200度を超えるので文字通りマグマと戦いながら掘り進めなくてはなりません。 本プロジェクトでは計7本の井戸を掘削しましたが、予期せぬトラブルの連続でした。どんなに調査を行っても地上から地下の全てを知り得ることはできないため、事前に掘削リスクを全て解消することはできないのです。 例えば掘ったものの蒸気が出てこなかったり、逆に掘っている最中にマグマで熱せられた蒸気が急に噴き出したりするリスクがあります。そうならないように事前に関係者と十分に検討し準備を進めますが、自然相手だと、もう怖いことばかりですよ。それでも地熱発電所がフルパワーで稼働できるだけの蒸気を取り出さねばなりません。それが私たちの使命でしたから。そんな状況を打開してくれたのが、佐々木さんをはじめとする若手技術者たちでした。佐々木 私たちは掘削リスクを少しでも軽減させるため、最新のモデリングツールを使って地下の状況を可視化することを試みました。またそのデータをもとに地熱貯留層があるでマグマと戦った4年間。心の支えはSCQDEだったGEOTHERMAL
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