WITH MATERIALS vol.04
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企業に属する研究開発者のミッションは、技術を世に出し、人に役立つものをつくることだ。 三菱マテリアルは、銅製錬から伸銅品まで一貫した銅加工事業を展開しています。長年、お客様のニーズを満たすさまざまな銅製品を開発してきましたが、中でも得意としているのが、無酸素銅とその合金の開発、製造技術です。 近年、自動車のEV化や次世代エネルギーの普及に伴い、そこで用いられる電気機器部材には大電流への対応と高い放熱性が求められるようになりました。そのため、銅材料の中で最も高い導電率と熱伝導率を有する無酸素銅の用途が急速に広がっています。しかし、電気機器の信頼性や機能向上を追求すると、既存の無酸素銅では強度や耐熱性が不足しているという課題がありました。 「企業に属する研究開発者には、技術を世に出し、人に役立つものをつくるというミッションがあります。三菱マテリアルが得意とする無酸素銅をさらに進化させ、お客様のニーズにしっかり応えなければなりません」と、研究開発を統括する牧は語ります。のイノベーションセンターでは、基礎研究の段階では、結果を気にせず自由に可能性を探る風土があります。今回の開発はそうした風土が功を奏しました。 伊藤が基礎研究で発見したシーズを、ブラッシュアップして製品化へとつなげる役割を担ったのが福岡です。「特性パラメータを調整しながら性能を最適化していくと、少しずつ材料が持つポテンシャルに確信を持ちました。弱点を克服した無酸素銅がどんな機器に採用されるのか、想像するだけでワクワクしましたね。『MOFC®-HR』がものづくりにインパクトを与えることは間違いないでしょう」 ラボでの検証を経て、いよいよ若松製作所の実機で試作を開始。最初は性能のばらつきがあり、実機での試作が思わしくないとラボで検証というサイクルを何度も繰り返しました。若松製作所の森川は、当時をこう振り返ります。「ラボで見出された特徴を実機で再現し、お客様に求められる仕様を満た09失敗を恐れずに可能性をとことん探る 今から5年前、金属材料の研究開発を行うイノベーションセンター北本支所では、専任研究員の伊藤のチームが無酸素銅の可能性を模索していました。「無酸素銅の特長である導電率と熱伝導率は強度や耐熱性とトレードオフだと考えられていました。しかしお客様が求めているのは、導電率も強度も同時に満たすもの。それが実現しなければ電動化の足枷になってしまう。その期待に応えるためにも、失敗を恐れずにあらゆる組成を試行錯誤していたところ、強度をアップしても予想よりも導電率が下がらない面白い現象をみつけました。研究者冥利に尽きる瞬間でしたね」 失敗を恐れないこと̶̶。三菱マテリアル電化・電動化の時代銅素材も進化する

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