古橋 E-Scrapリサイクル事業に関わる者として、電子廃棄物を使ったアート作品を手掛けられている長坂さんの活動に関心があります。そもそもなぜ、アグボグブロシーに関わるようになったのでしょうか。長坂 自分にできるサステナビリティは何かと考えていたとき、ふと見た雑誌で廃棄物が発展途上国へ投棄されていることを知り、ガーナのアグボグブロシーの情報を得て、ここに行くべきだと直感が働いたのです。 初めて目にしたアグボグブロシーは、同じ地球とは思えない、時空を超えたような別世界。電子廃棄物を野焼きして、有毒ガスを吸いながら金属を取り出している人たちを前にして、自分にできることはアートでこの現状を世界に伝えることだと決意しました。山形 長坂さんは現地の仲間とどのように信頼関係を築いていきましたか。E-Scrapを取り扱うお客様は世界中にいますが、バックグラウンドの違う人たちと親密な関係を築くことはそう簡単ではないと感じていて。長坂 何回も通って私立学校やミュージアムを設立したり、皆で「ムーンタワー」という作品を作ったりしているうちに、部族長に認められ、徐々に仲間が増えていきました。一生かけてこの問題解決に挑戦したいという愛が伝わったのかもしれません。山形 私たちも国内外を問わずお客様のヤードを訪問して、どのようなE-Scrapを取り扱っているのか、現物を見ながら商談することを大切にしています。また、製錬所がどのように操業されているのかをプレゼンし、お客様に当社のファンになってもらいたいという気持ちで臨んでいます。古橋 私たちはリサイクル技術の力を活かしてサステナブル社会の実現に貢献したいと考え、取り組んでいます。長坂さんからみて、三菱マテリアルについては、どう思われますか。長坂 高い技術力を、今後も社会のために活かしてほしいですね。現在発展途上国と先進国の暮らしを比べてみると、先進国は発展途上国の100年後の未来のような、ハイクオリティな暮らしを味わっています。でも、これから世界中をサステナブル社会にするためには、先進国と発展途上国が歩み寄ることが必要です。そのためには先進国がベクトルを反対側に向けて、発展途上国を引き上げないといけない。御社のような長年技術力を磨いてきた企業が、解決案や進むべき道を示していくことが大切だと思います。山形 昨年12月、私たちは「MEX」を稼働させました。お客様とのコミュニケーションツールとしてはもちろん、納入したE-Scrapのデータ分析にもご活用いただけるプラットフォームです。「MEX」を通じて、これまで以上にお客様にとって身近なパートナーになることを目指しており、そのなかでお客様に適したご提案をする機会も増やしていきたいと思っています。古橋 社会課題を解決し、サステナブル社会を実現するためには、当社の「技術やサービスの力」、そして、長坂さんのアートが持つ「人を動かすインパクト・発信力」の両方が欠かせませんね。長坂 美術家として、社会的に意味のあるインパクトを与えられる存在でありたいですね。絵を販売して得たお金をガーナでの事業に使って、貧困問題と環境問題を改善する。文化・経済・社会貢献の歯車が回っていることが、本当のサステナブル社会ではないでしょうか。山形 長坂さんのアートが放つ求心力は、同じくサステナブル社会を目指す者として刺激になります。当社はE-Scrapの処理能力を年間20万トンまで引き上げることを目標に掲げており、国際的な基準や規制に対応しながら、安全・安心なリサイクルを推進しています。私も理想の未来を思い描きながら、志高く日々精進していきたいと思います。古橋 当社の企業理念でもある「人と社会と地球のために」、私たちが見据えている未来は同じです。今後の長坂さんのご活動も拝見しながら、自分たちの原動力にしていきたいと思います。長坂 本当に豊かで、平和な世の中をつくるために、やりたいことがたくさんあります。それぞれの力を活かして、お互いにがんばりましょう。11アグボグブロシーをサステナブルタウンに技術力を社会課題の解決に活かしてほしい互いの持ち味を活かして、切磋琢磨を続ける
元のページ ../index.html#11