三菱マテリアル

SIZスパッタリングターゲット

集合写真

タッチパネルの薄型・軽量化を実現する技術

近年、スマートフォン等の薄型・軽量化が進んでいます。それを可能にしている要因の1つに、タッチパネル等に使用する帯電防止高抵抗膜の存在があります。その成膜用ターゲット開発の挑戦を紹介します。
写真左より:大友、杉内、森、桂、井尾

すっかり生活に浸透しているタッチパネル。
スマートフォンをはじめ、銀行のATMや駅の切符販売機、カーナビゲーションや家電製品など、日常のあらゆる場面で私たちはタッチパネルを使用しています。
なんと言っても、魅力は「直感的に操作できる」こと。画面に表示されたアイコンに直接触れるだけで操作ができるため、機械操作に不慣れな人でも入力できるのが特長です。

そのタッチ操作の検出を可能にしている方法の1つに、静電容量方式があります。静電容量方式は、触れた際に起こるパネル表面の電気容量の変化によって、押した位置を検知するものなのですが、その一方で、指以外の要素で生じてしまった電気容量の変化は排除することが求められます。それを可能にするのが「帯電防止高抵抗膜」と呼ばれる薄膜です。

帯電防止高抵抗膜は、「スパッタリング」と呼ばれる、真空中で電圧をかけ、イオンを利用してターゲットの粒子を弾き飛ばし、膜を蒸着させる方法で形成します。

今回は、三菱マテリアル三田工場が開発した「SIZ(In2O3系スパッタリングターゲット)」について紹介します。

光ディスクでの知見を、新たな開発に活かす

──まずは、製品の特徴を教えてください。

森 スマートフォン等のディスプレイを想像してください。現在はそのほとんどがタッチパネルになっていますが、その構造は、年々、進化を続けています。初期の頃は、液晶パネルとは別にタッチセンサーそのものを個別でつくり、液晶パネルの上に乗せるかたちをとっていました(アウトセル型)。それがだんだんとタッチセンサーと液晶パネルの構造が一体化し(オンセル型)、近年では、液晶パネルの内部にタッチセンサーの検知電極が組み込まれるようになりました。これをインセル型と呼びます。それと比例するように、液晶ディスプレイの薄型・軽量化も進んでいきましたが、薄型・軽量化に貢献するインセル型パネルにするには「帯電防止高抵抗膜」が必要となります。

帯電防止高抵抗膜には、抵抗値を一定範囲内に制御しなくてはならないことが求められます。私たちの周囲にはさまざまな電子機器がありますが、そのノイズが入り込まないよう遮断しなくてはならないのと同時に、タッチ操作した信号はきちんと内部のセンサーに届けなくてはなりません。また、液晶の表示を映し出すため、膜で覆っていても液晶からの光は遮らないという高い透過性も要求されます。さらに、スマートフォン等は、日常頻繁に使用するものなので、どんな環境でも性能を保つ耐久性も必要となります。
その、大きく3つの特性を可能にしたのが、三田工場が開発した材料「SIZ」です。

SIZスパッタリングターゲット

──そもそも、開発に至ったきっかけは何だったのでしょうか。

大友 お客さまから、先ほど森さんが話した3つの特性を満たす膜が欲しいとの要望があり、開発が始まりました。Blu-ray等の光ディスクはご存知かと思うのですが、現在では、大容量の光ディスクが世の中に出てきています。
もともと、光ディスクには長寿命という利点があり、データを長期間保存することができます。その耐久性に貢献している材料の1つに、SIZがありました。新しい用途転換ができるかもしれないという着想から、最初のアイデアを出しています。

森 光ディスクには記録層があり、それを保護する膜がSIZで形成されています。
光ディスクに記録するには、透明な膜でないと光が記録層に届きません。耐久性と透明性2つがタッチパネルに求められる特性と共通していたので、もしかしたらと思いました。抵抗値においては、光ディスクでは求められていなかったので初めは不明でしたが、研究を進めていくにつれ、求められる抵抗値が得られそうとわかり、お客さまに試していただきました。

耐久性試験

──お客さまの反応はいかがでしたか。

森 実は、お客さまから要望をいただいた当初は、別の材料を提案しました。けれど、結果はあまりよくなくて...。SIZに切り替えてからは「これはいいですよ」という反応をいただきました。その後、微調整をしていく必要はありましたが、お客さまのところで製品に近い形にして評価していただいたところ、狙いどおりの特性が出ました。

森
杉内 杉内

実験と実際のスケールの違い。短期間で最適な製品を届ける

──開発で苦労したことを教えてください。

大友 そうですね。SIZに行きつくまでの材料提案には、膜に対する深い理解が必要となり大変ですが、そのあとの製品にするプロセスも大事になります。実際のお客さまのスパッタリングの装置は大きく、そのサイズに見合ったものづくりが求められます。協力会社も含めて、大きなものを「いかに安定して、お客さまの必要量を作るか」を考えなくてはならないことが苦労するところです。

杉内 お客さまの装置の大きさは決まっていて、その最大寸法で設計しようとしているのですが、生産設備の構想や生産性を考慮して「最適な解」を見極めるのが腕の見せどころです。

井尾 ターゲットがセラミックスなので、製品のハンドリングが難しいです。陶器を想像していただくとわかりやすいかと思いますが、ともかく割れやすい。サイズが大きくなればなるほど、割れのリスクも高くなるため、実現可能な範囲内での大型化に力を入れています。

井尾 井尾
桂

桂 ターゲットを納品して終わりではなく、お客さまの装置で狙いどおりの膜ができるまでが開発になります。実験用の装置では発生しなかったことでも、実際にお客さまの大きな装置になると起こってしまう事象というのもあります。調整に困ったお客さまの問い合わせにすぐに返答できるよう、実験中でのできごとなどの経験を集め、解決へ導く引き出しを増やしています。

大友 スマートフォン等をみてもわかるとおり、ディスプレイのモデルチェンジはとても早いです。そうなると、いかにその場でお客さまの要望に応える材料を提案できるか、いかにプロセス確立からお客さまの装置での最適な使用条件の調整までを迅速に行えるのかがカギになります。

製品写真,SIZ膜

──日々、開発ですね。

大友 止められないですね。三田工場は特に先端材料を扱っている分、開発主導型の工場になります。ですから、開発部隊は「常に新しいことへのチャレンジに手を緩めず、これまでに無い価値をお客さまに提供していく」ということが使命だと思っています。

大友大友

三菱マテリアルなら実現できる、ユニークな材料メーカーでありたい

──今後の展望を教えてください。

大友 SIZもそうですが、私たちの開発は材料設計が特に重要です。お客さまが求める特性に応えるのはもちろん、お客さまがスパッタリング装置で成膜する際の、使いやすさや使い心地というのも、材料設計で決まってきます。徹底的にお客さまに寄り添った踏み込んだサービスを提供できるようにしていきたいです。そして、技術力の高さとサポート力をお客さまに認知していただき、「ユニークな材料を提案できるメーカー」でありたいと思っています。

SIZスパッタリングターゲット

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