PROJECT STORY05

非接触温度センサ市場への挑戦。
試された研究所と工場の“連携力”。

PROJECT MEMBER

SECTION01

最先端のサーミスタ技術を活かして
未知なる領域へ進出する。

セラミックス工場の主力製品のひとつであるサーミスタ※1。この分野において最先端を走っている当社技術を、もっと他の分野にも応用できないか?そんな想いから立ち上がったのが、“非接触温度センサ開発プロジェクト”である。非接触温度センサという製品自体は、もともと他社が先行して販売していたもの。しかし、他社と比較して潜在的には一桁上の高精度なサーミスタを工場で量産化している技術を持つ当社ならば、より市場のニーズに合致した製品を開発できるはず。当時、サーミスタの研究に携わっていたメンバーたちには、そんな確信にも近い自信があった。既に流通している製品よりパフォーマンスに優れたセンサを開発できるか。当社として、未知なる領域への挑戦が始まることになった。
2009年から茨城県那珂市の中央研究所で進められていた非接触温度センサの研究開発は、2014年に社内の重点プロジェクトに指定され、同年9月から埼玉県秩父郡のセラミックス工場と共同で、更に開発を加速することになった。そのプロジェクトのメンバーの1人が、中央研究所の細川である。彼が担った役割は、主に動作原理に基づいた新製品の設計・試作と評価。それを繰り返し行うことだった。当時、入社1年目であった細川は、プロジェクトに声がかかった時の心境を次のように振り返る。「新入社員だったこともあり、最初はプロジェクトの意義もよく分かっていなかったのが正直なところでした。しかし、仕事を進めていくうちに、その重要性が徐々に分かってきた。『自分はすごいプロジェクトに参加させてもらっているんだ』という想いがふくらみ、やりがいも大きくなっていきました」。

2009年から開発してきた非接触温度センサは、中央研究所とセラミックス工場の技術者や事業部の営業スタッフの奮闘の甲斐あって、大手メーカーに採用され、2015年には製造が開始された。ただ、製品として安定して製造し、販売を拡大していくためには、製造工程で発生する不良品の撲滅が喫緊の課題であった。そのためには、製品を構成する部材の設計を変更する必要がある。また、市場での競争に勝ち抜くためには、より顧客ニーズに合う高性能な新製品を実現しなければならない。ここから重要になってくるのはセラミックス工場との更なる連携。そんな時、工場から新たにプロジェクトに参加したのが、後に細川にとって最良のパートナーとなる関根であった。

※1サーミスタ:物体の温度を測定する温度センサに用いられる抵抗体のこと。当社は、独自の原材料により高精度な温度測定を実現したNTCサーミスタを製造。主に、車載各種機器(カーエアコン、エアーフロー)、エアコン、冷蔵庫等の熱交換箇所で使われる。

SECTION02

プロジェクトの命運をかけて
顧客からの難題に挑む。

電子材料事業カンパニーにおけるデバイス製品群は、セラミックス工場がマザー工場として製造工程を設計し、海外工場で量産される。非接触温度センサも同様の方式で量産に取り組んでいた。関根は、セラミックス工場の中心メンバーとして、中央研究所およびタイ工場との橋渡し的な役割を担当。中央研究所に対しては量産時に問題となる点や新製品の鍵となる性能のフィードバックを、タイ工場に対しては、製品の精度を安定的に確保するための、素子に対する要求性能を明確にするとともに、量産ラインで試作品を流した際の特性評価を行っていた。言ってみれば、製造をコントロールする役目を担っていたのが関根である。
そんな中、本プロジェクトは重要な局面を迎える。とある大手メーカーが製品に必要となる非接触温度センサを設計する際、当社製品に興味を示してくれたのだ。ここで採用が決まれば、非接触温度センサ市場における当社価値が一気に高まる。本プロジェクトの未来を決めるといってもいい。細川も関根も、かつてない重圧と戦うことになる。

顧客から提示された要求とスケジュールに対応するには、中央研究所とセラミックス工場のチームワークと迅速な開発が必要と考えられた。迫りくる時間。細川らは試作品を作り続け、適切な性能評価をしなければならない。試作品のテストの一部は研究所から片道5時間を要するセラミックス工場で実施されたが、細川は時間を惜しまず直接足を運んだ。しかし、なかなか満足のいく結果が得られず、研究所に戻っては改良の繰り返し。その表情には、疲労の色が見え始めていた。
一方、関根らは、量産時に考えられる問題点なども早急に解決する必要があった。工場側の視点から問題が発生する原因の仮説を立て、その裏付けと実証を研究所と協力しながら進め、その結果をもってタイ工場に飛び、確証を得た上で顧客に改善策を提案。しかし、簡単には承諾は得られない。果たして、期限内に顧客の要求に応えることができるのか。関根らの表情にも、焦りの色が見え始めていた。
しかし、どんなに困難でも、スケジュール内に改善策を提案し、納得してもらわなければならない。二人を含むプロジェクトのメンバーは、直面した課題に共に取り組んでいった。時には熱く議論を戦わせながら、互いに持てる力をぶつけ合った。そして、ようやく光明が見えてくる。細川らが幾度となく繰り返した試作と解析から、顧客ニーズに合う製品設計を考案。関根らはその結果を受けて、顧客からの要求を満たす改善策を提案することができた。

SECTION03

非接触温度センサの未来は、
まだまだ可能性に満ちている。

この重要なプロジェクトに携わったことで、二人が得たものは何だったのか。
関根は、「時間がない中で顧客の要求を満たすことは、正直辛いと感じたこともありました。ですが、開発、マザー工場、海外工場という部門を超えてプロジェクトチーム全員が一丸となって取り組めば、短時間でも課題を解決することを実感できた。それから、製品の開発から量産化までのすべての工程に関われたことは大きかったですね。この経験を積んでいる人間は、社内でもそう多くはいませんから。今後の財産になると思います」と語る。一方、細川は、「自分が開発に携わったものが、製品として世の中に出荷される。それがこんなに嬉しいものなのかと実感しました。この喜びを味わうと、今後も製品化につなげられる開発をしなければという想いが一層強くなりましたね」と話してくれた。

プロジェクトをさらに発展させていくために、二人はどんな野望を抱いているのか。関根の答えは、「今回量産化に成功した製品よりも、さらに高精度なものを開発したいと思っています。また、マーケットインの発想を推し進めて、市場を拡大していくことも重要な使命だと考えています。将来的には、三菱マテリアルが世界でもNo.1のサーミスタメーカーと認知されるようにしていきたいですね」というものだった。それに対し細川の答えは、「より高度な新製品を開発したいという想いは、関根さんと一緒です。そのためにも、中央研究所としてはセンサ基盤技術をさらに向上させなければなりません。この技術を進歩させることができれば、まだ顕在化されていないお客様のニーズに合った製品の開発も可能になるでしょう。世の中の役に立つセンサを開発し続けることが、自分の責務と考えています」というもの。彼らの熱い想いがある限り、三菱マテリアルの非接触温度センサは社会になくてはならない存在になっていくに違いない。

他のプロジェクトストーリーを見る