PROJECT STORY04

新規リサイクル技術の確立。
焼却灰の再資源化が、
ここから加速する。

PROJECT MEMBER

SECTION01

飛灰から塩素を取り除けるか?

三菱マテリアルが掲げる『循環型社会への貢献』。成し遂げるためには、社会から出る廃棄物をどれだけ有効利用できるかが鍵となる。たとえば、都市ゴミの焼却灰。現状、大部分の灰は埋め立てて処理されているが、国内のゴミ処分場は確実に逼迫してきている。この問題を解消するためにも、焼却灰の再資源化に取り組むことは避けて通れない。当社では、セメント事業を行っており、焼却灰をセメントの原料として再利用することが期待されている。
焼却灰には、主灰と飛灰の2種類がある。主灰はすでにセメント原料として再資源化は進んでいたが、飛灰は遅々として進まなかった。なぜなら、飛灰にはセメントの大敵とも言える塩素が大量に含まれているからだ。高濃度の塩素は、セメント製造工程でトラブルを引き起こす。しかし、国内の環境リサイクルをリードする立場にある当社が「飛灰は無理です」とあきらめる訳にはいかない。飛灰から塩素を取り除くための研究が、中央研究所で取り組まれることになった。
この研究のリーダーに指名されたのが都市資源リサイクル研究部の林。脱塩素洗浄技術という、極めて難易度が高い技術を開発できるのは彼しかいない。ただ、林でも、この技術を開発するのは簡単なことではなかった。

「一口に飛灰といっても、30種類以上ものサンプルを調査するとさまざまな化学組成や特徴があることがわかりました。そのため、1つ1つの飛灰の性質を徹底的に調べ上げ、どんな飛灰にも対応できるプロセスを設計する必要がありました」。
たとえば、塊状の飛灰は粉砕設備を使って粉状にする、濾過しにくい飛灰は助剤を使って濾過しやすくする、など。林は、次々と迫ってくるハードルを飛び越えながら、あらゆる飛灰を脱塩できる仕組みを作り上げていった。しかし、プロセス設計だけでなく、新たな問題が。それは、塩素にも水に溶けやすい形態のものと溶けにくい形態があることだった。難しいのはもちろん後者。水に溶けにくい塩素をどのように確実に落とせるか。この課題に、林は悩まされ続けた。さらに、もう1つ、乗り越えなければいけなかったのが水処理。飛灰を洗浄した排水をどう処理するか、これを解決しなければ飛灰の再資源化への取り組みも本末転倒になってしまう。林は苦悩した。
「脱塩の研究と排水の研究、どちらも同じくらい時間をかけて取り組みました。それだけ難しい課題でしたからね。しかし、研究に研究を重ねることで、ようやく解決への糸口が見えてきました。結果、難溶性塩素は新たな手法を導入することによって除去することに成功、排水についても有害元素を確実に排水基準値以下に抑える技術を開発できたのです。これでやっと前に進められると思いましたね」。
林が技術的な課題をクリアしたことで、飛灰再資源化プロジェクトは、いよいよ事業化に向けて動き出すことになる。

SECTION02

事業化は、
研究・開発だけでは進まない。

事業化するにあたり、その中心的な役割を担うのは環境・エネルギー事業本部。どこに工場を建てればいいのか、どの程度の処理量が必要か、そのためには、どんな設備を導入すればいいのか、どのくらい費用をかけられるのか…。さまざまな角度から検証され、新工場の骨子が徐々に出来上がっていった。そして、2017年4月、飛灰のセメント資源化事業会社として、北九州アッシュリサイクルシステムズが設立された。ここで環境・エネルギー事業本部からプロジェクトに参画することになったのが、当時、入社4年目の宮田である。
新会社の操業開始予定は2018年4月。それまでに、宮田は、設備設計・選定、建設計画と進捗管理、行政への許認可申請、およびそれらをオンスケジュールで進めるための多様なプレーヤーとの折衝など、やり遂げるべきことは山ほどあった。宮田は、途中から参加したため、メンバーに追いつくべくプロジェクトの背景・経緯を自力で一から調べなおし、質問あるいは提案を積極的にすることを心がけた。そして、セメント工場との折衝も彼に託された重要な任務。いくら飛灰から塩素を取り除くことができても、それをセメント原料として利用してもらえなければ事業として成り立たない。どんな状態であれば受け入れ可能なのか、宮田は詳細にヒアリングして、問題を解決していった。

「新しい場所に新しい工場を作るということで、するべきことは山積みでした。許認可をスケジュール通りに取得するための自治体との交渉なども自分の役目でしたから。このプロジェクトに参画してから、時間的に余裕のあった日はほぼありません。それでも、新工場の建設から運営準備に携われるという喜びは何物にも代え難かった。また、このプロジェクトに携わる前はセメント工場に所属していたので、セメントに再び関われることも嬉しかったですね。これだけやりがいのある仕事を任せてもらえたことは、幸運の一言に尽きると思います」。
そんな宮田や生産技術部などの尽力もあり、2017年12月、新工場の社屋は遂に完成した。その瞬間を見届けた宮田は、言いようのない達成感を味わったという。研究チームのリーダーであった林にとっても、感慨は大きいものだった。「今までの苦労が報われた気がして、胸がいっぱいになりました」。

SECTION03

二つの思い。

新工場の目標となる脱塩された飛灰生産量は、年間3万トン。主に当社セメント工場にセメント原料として受入れてもらう計画だ。達成するためには、今後も二人の連携が鍵になることは間違いない。ただ、林も宮田も、その先を見据えて取り組んでいかなければと、口を揃える。
「飛灰だけでなく、他の廃棄物に対して脱塩洗浄技術を応用していきたいですね。現在はセメント工場から排出されるダストの脱塩にも取り組んでいますが、これは飛灰よりも一段と難易度が高いです。しかし、リサイクル事業を拡充するためには、脱塩は必須となるコア技術です。私に課された使命だと思って、必ず確立したいと思っています」(林)。
「まずは北九州の新工場立ち上げを必ず成功させたいですね。飛灰の再資源化プロジェクトは、環境・エネルギー事業本部に収まらず、三菱マテリアルにとって絶対に成長させなくてはいけないプロジェクト。自分も貢献したいと思っています」(宮田)。
二人の口から語られた言葉には、「まだまだこれから」という想いが滲み出ていた。三菱マテリアルが標榜する『循環型社会への貢献』をさらに具現化していくために、二人はいまスタートラインに立った。

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