PROJECT STORY01

E-Scrap事業
目指すは、圧倒的世界No.1。

PROJECT MEMBER

SECTION01

サンプリングライン新設。
千田と前川の挑戦が始まる。

2016年4月、直島製錬所に新設された第2金銀滓センターが操業を開始。金銀滓(E-Scrap)とは、主に使用済みの家電やパソコン、スマートフォンなどから発生する廃電子基板のことであり、金・銀・銅・白金・パラジウムなど有用な金属が多く含まれている。この金銀滓をリサイクルすることで、天然の鉱山に比べ環境や地域コミュニティーへの影響は少なくなるため、“都市鉱山”として世界的に注目されているのだ。近年は、環境意識の高まりを背景とした家電や電子機器のリサイクル率向上に伴い、金銀滓の発生量は世界的に拡大基調。三菱マテリアルの金属事業カンパニーでは、独自の製錬プロセスである三菱連続製銅法を活用し、金銀滓から有価金属を回収するシステムを確立している。三菱マテリアルの金銀滓処理能力としては、2010年頃の金銀滓処理能力は年間3万トンほどであったが、第2金銀滓センター操業開始により年間約14万トンの処理量となり世界トップ。金属事業カンパニーにとって金銀滓リサイクル事業は収益の柱のひとつであり、今後さらなる成長が求められている。

増え続ける金銀滓に効率よく対応するためにも、サンプリングラインの新設が不可欠な状況になっていた。そこで、サンプリングライン新設のプロジェクト担当として任命されたのが、設備担当の千田と、技術担当の前川である。
千田が担った具体的な役割は、設備の基本設計と予算および工事の管理全般。設備の基本設計とは、前川が要望する機械や製造ラインをヒアリングし、ベルトコンベアーや破砕機などの機器仕様を決定すること。いわば、現場の責任者の役割である。対して前川は、試運転から操業運転まで管理する立場。いわば、司令塔にあたるポジションと言っていいだろう。このプロジェクトが成功するかどうかは、二人の連携が上手くいくかにかかっていると言っても過言ではない。「入社3年目の千田と2年目の前川には少々荷が重いのではないか?」という声もあったが、二人はそんな社内の雑音をシャットアウトすべく、獅子奮迅の活躍を見せることになる。

SECTION02

前例のない条件に苦悩する二人。
ようやく見えてきた光明。

サンプリングラインのレイアウトを考えるにあたって、千田が苦心したのは既設ラインとは設置条件が大きく異なっていたことだ。新たなサンプリングラインは既設ラインの基本設計を踏襲しているものの、既設ラインが平地に建設されたものであったのに対し、新設ラインは段差のあるフロアを横断する形で建設しようとするものである。その環境下で約30もの機器を作業者全員が効率的かつ快適に作業できるように配置するのは、並大抵のことではなかった。人の動きに合わせた適正な配置とはどんなものなのか、段差があるデメリットをメリットに変えることはできないのか。千田の苦悩は続いた。もちろん、既設ラインの設計を担当した先輩社員からは十分過ぎるほどのアドバイスは受けていた。しかし、ここまで条件が異なると、過去の例から学ぶというだけでは任務を遂行できない。千田は、関係者を集め幾度も、打開策を話し合った。初期段階では、「そんなレイアウトは不可能だ」と却下されたこともある。でも、本当に不可能なのか、時には議論を戦わせなくてはならない。関係者が口をそろえて「不可能だ」ということでも「こうすれば可能になるのではないか?」と粘り強く提案し、少しずつ形にしていった。前川が考える理想の操業環境を実現するのが自分の使命。自分が妥協してしまっては、前川にバトンを渡せない。千田は、そんな想いを胸にサンプラーの基本設計を完成させていった。

前川の苦悩も、千田と同様だったという。サンプリングをするにあたっては、受け入れた大量の金銀滓を何段階かに分けて一定の割合量ずつを抜き出す必要がある。これを縮分というが、最初の振り分けで出鼻をくじかれてしまう。サンプリング工程におけるはじめの縮分機における抜き出しがなかなか想い通りにいかない。この縮分機で狙った縮分率にならないと、次の段階に進めずサンプリングを行うことができないのだ。狙った割合通りに抜き出すためにはどうすればいいのか。当然、既設ラインの設計を参考にしながら調整していくのだが、やはり使われている設備が異なっていると前回同様というわけにはいかず、抜き出し口の微妙な幅の調整作業が必要になる。全体の工期が限られている中で、この段階で躓いてしまうのは致命的なロスと言っていい。前川は焦っていた。しかし、ここで千田が付きっきりでフォローする。前川が微調整する度に試運転に立ち会い、すぐに設計の改善策に着手。その時のことを千田は次のように語った。「試運転の結果を判断するのは前川の役割。その前川から試運転の結果を受けて、『これではダメなんです』と言われたら、私は現状を把握し、彼と解決策を話し合いました。そこでお互いに意見を出し合いながら、再び動かす。その繰り返しでしたね。私は私の役割を全うし、前川は前川の役割を全うする。二人が責任を持って問題と向き合えば、必ず解決できると信じて取り組みました」。
こうして短期間で4~5回のトライ&エラーを繰り返しながら、ようやく前川が思い描いた理想的な結果に辿り着いた。

SECTION03

新サンプリングラインの完成。
その先に思い描く野望。

縮分機調整の関門を突破すると、その後の工程の試運転および各機器の調整に着手。厳しいスケジュールと戦いながらも、最終的には狙い通りの縮分率を達成することができた。二人にとっては、初めてと言っていい大型プロジェクト。それをやり遂げられた原動力は何だったのか。その問いに対し千田は、「金銀滓増処理への取り組みは、会社にとっても非常に重要なプロジェクト。そこに携われるのはうれしかったし、今回作る設備はできる限り長く使われ、安定操業に貢献できるものでなければならない。そんな想いで取り組みましたね。ただ、これからもっと改善しなくてはと思っています」。同じ質問を前川にぶつけてみると、「既設に劣らないラインを作り上げたいという気持ちが強かったですね。ただ、いざ完成してみると、縮分率の目標こそ達成できたものの、一方でさらなる処理能力向上という新たな目標も見えてきています。今後はもっと改善に取り組んでいかなければいけないと思っています」。

どこまでも前を見据える二人。そんな二人にとって、お互いはどのような存在だったのか。「前川は後輩ですが、主張すべきところはハッキリものを言える。非常に責任感が強い人間だと感じました。また、とても厳しいスケジュールの中で、なんとかやり遂げられたのは彼がリーダーシップを発揮していたから。後輩ながら頼もしい存在でした」。そんな千田の答えに対し前川は、「トラブルの連続でなかなか前に進まなかった時に、現状を冷静に分析し、対策を実行してくれたのが千田さん。自分が依頼したことに対し、客観的な視点から意見を述べてくれる点もありがたかったです。また、先を見据えたスケジュールを考えてくれたことにも感謝しています」。
現在も、千田は設備のメンテナンス担当者として、前川はサンプリングラインの操業管理者として、このプロジェクトに携わっている。彼らは引き続きその改善に取り組みながら、さらなる未来設計図も描いている。「ゆくゆくは新規工場の建設プロジェクトに携わりたい。生産技術者として、いつか必ず実現したい夢です」(千田)。「自分はもともと環境・エネルギー事業本部からスタートした身ですので、やはりリサイクルプロセスの技術開発に関わりたい。人手不足が懸念される日本において、人に頼らないリサイクル技術の開発は必要不可欠。その一翼を自分が担っていきたいです」(前川)。金銀滓サンプリングラインの増設という大型プロジェクトを成功させた二人の野望は、決して夢物語では終わらない。

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