震災復興への、継続的な取り組み

被災地のがれき再生に向けて ~セメント工場での、災害廃棄物の受け入れと活用~

三菱マテリアルグループは、多くの事業所が被災した経験を持つ企業として、本業を通じて、東日本大震災の被災地におけるさまざまな要請・ニーズに応えています。 震災直後の緊急的な対応から、本業を通じたより継続的な取り組みへと軸足を移しながら、当社グループが培ってきた技術やノウハウを活用し、復興に向けたさまざまな課題の解決に貢献できるよう力を尽くしたいと考えています。

セメント工場の「社会的機能」を最大限に活かして

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セメント工場は、製品であるセメントを通じた道路・橋梁といった社会インフラ整備に貢献している以外に、世の中のさまざまな廃棄物を処理・活用することができる社会的機能を有しています。
これは、セメント工場が1,450℃という超高温の焼成プロセスを有して、廃棄物をセメント原料や熱エネルギー代替として有効利用すると同時に、廃棄物の無害化が可能となっているためです。この時、副次的に廃棄物が発生することがないことも大きな特徴です。例えば、火力発電所の石炭灰、都市ごみ焼却灰、下水汚泥、廃プラスチックといった、他産業や人の営みから出る大量で処理しにくい廃棄物の有効利用が可能となっています。そのため、東日本大震災後に大量に発生した災害廃棄物の処理について、関連する自治体から要請をいただきました。
当社ではこれらにお応えし、安全が確認されたものを、地域住民の方々や製品ユーザーのご理解が得られたことを前提に、岩手、横瀬、青森の3工場で順次、被災地の廃棄物受入れを決定しました。工場によって処理している廃棄物は異なりますが、主に、木くず、廃プラスチックのような熱エネルギー代替廃棄物や土砂やレンガ・瓦のような無機物を原料代替物として有効利用しています。
このような廃棄物の中には、津波による海水の影響を受けてその中に含まれる塩素が受け入れ処理の障害となる可能性もありますが、当社では塩素を抜き出す塩素バイパス設備を有しており、対応可能となっております。
また、2013年7月までの合計の受入量は、約54,000トンに達しています。
今後も、自治体からの要請に応えて、被災地の廃棄物を安全・着実に処理しながら、一方で基礎資材であるセメントを確実に供給し続けることによって、復興の一助になれればと考えております。

当社における災害廃棄物の処理状況(2013年7月まで)

工場 実施時期 処理対象 受入実績
岩手工場
(岩手県一関市)
2011年10月~ 木くず、廃プラスチック、可燃物、不燃物 46,232t
横瀬工場
(埼玉県秩父郡横瀬町)
2012年9月~12月 木くず 490t
青森工場
(青森県下北郡東通村)
2012年10月~ 可燃物、不燃物 7,581t

岩手・宮城県沿岸市町村の災害廃棄物の処理目標と実績

図 参考:災害廃棄物等処理の進捗状況(環境省:2013年8月30日付資料より)

写真 処理対象の木くず

写真 木くずの搬入

写真 受け入れの様子

多岐にわたるステークホルダーとの対話

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災害廃棄物の処理は復興に向けた優先課題の一つです。しかし、災害廃棄物は被災地で大量に発生していることから国内で広域処理を行わなければならなかったことや、原子力事故による放射能問題が背景にあり、受け入れを円滑に進めるには、関連するステークホルダーの方々の不安を解消し、安全・安心を確立するためのきめ細やかな対応が欠かせませんでした。
当社は受け入れにあたり、(1)地元自治体からの正式な要請、(2)受け入れ処理を予定する災害廃棄物の事前の安全性確認、(3)地域住民の皆様のご理解、の3点が満たされることを前提としています。加えて、製品ユーザーのご理解とともに、従業員の安全・安心を大切にしてきました。
特に、社会的な関心の高い放射能濃度については、一般食品と同等以下であることを受け入れ条件としています。また、出荷する製品についても定期的に濃度測定を行い、結果をWEBサイト上で公表しています。なお、これまで当社製品中の放射能濃度は、全ての製品が原子力災害対策本部通知「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取り扱いに関する考え方」(2011年6月16日、国土交通省発表)を満たすことを確認しています。
更に、ステークホルダーの皆様に当社の取り組みをご理解いただくため、勉強会・説明会、工場見学、安全の「見える化」といった多角的なコミュニケーションも行ってきており、今後とも、透明性の確保や信頼関係の維持・強化に努めていきます。

* 一般食品の基準値:セシウム134・137の合計で100Bq/kg

ステークホルダーの皆様とのコミュニケーション:岩手工場の取り組み

取り組み 主な対象 概要 実施状況
情報開示 全てのステークホルダー 製品の放射能濃度測定結果をウェブサイトで公表 継続実施
勉強会・説明会 地域住民の方々、協力会社、従業員 放射能についての正しい知識を伝達 計20回以上
工場見学 地元の学校、大学、行政、従業員の家族 など 「開かれた工場」として見学者を受け入れ、取り組みの内容を説明 のべ1,100人以上が参加(2013年7月まで)
安全の「見える化」 協力会社、従業員 安心のため、被爆線量を定期的に確認 継続実施

受け入れを機に、地域との信頼関係を育む

写真 セメント事業カンパニー 生産部長
岸 和博

東日本大震災では、当社の4つのセメント工場のうち、岩手工場で屋根の崩落などの大きな被害を受けました。しかし、従業員が一丸となって復旧活動を迅速に行うとともに、事業所内の井戸水や救援物資の提供など、地域への支援活動も臨機応変に展開することができました。また、災害廃棄物の受け入れに関しては、徹底した情報公開に努め、地域の皆様との対話を通じて当地での操業に対する理解を深めていただける契機になりました。
セメント工場は、一般のお客様に直接、最終製品をお届けする工場と異なり、近隣の方々にとってこれまであまり馴染みやすい存在ではなかったかもしれませんが、震災以後、工場見学を通じて、多くの方々がセメント工場の役割と可能性に関心を持ってくださいました。ある工場では、自治体職員の方々から、「震災後、セメント工場の、さまざまな側面を知って、こうした頼りになる工場が身近にあることに安心しました。もし、万が一災害があった時にも、地域に根ざす工場としてぜひご協力をお願いします」との声をいただきました。共通理解の上に相互信頼を築く、こうした関係づくりを、今後も大切にしていきたいと考えています。
セメント工場の社会的機能をより効果的に発揮していけるよう、これからも地域の皆様との交流に取り組んでいきたいと思います。

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復旧・復興工事における「新たな循環資材」の活用 ~銅スラグの特長を活かして、マテリアル・プレミアムを発揮~

三菱マテリアルグループは、多くの事業所が被災した経験を持つ企業として、本業を通じて、東日本大震災の被災地におけるさまざまな要請・ニーズに応えています。 震災直後の緊急的な対応から、本業を通じたより継続的な取り組みへと軸足を移しながら、当社グループが培ってきた技術やノウハウを活用し、復興に向けたさまざまな課題の解決に貢献できるよう力を尽くしたいと考えています。

セメント工場の「社会的機能」を最大限に活かして

写真銅スラグが使用された
重量コンクリートの消波ブロック

写真ケーソンの中詰材として活用

被災地では、大津波で深刻な損傷を受け、機能が停止していた港湾施設の復旧工事が進められていますが、生コン用骨材などの土木資材の不足が、進捗を遅らせる要因の一つになっています。三菱マテリアルグループは、天然の原料(砂、砂利、土)に代えて、銅製錬所の製錬工程で副産物として安定的に産出する銅スラグを土木資材に活用することを提案しています。
銅スラグは、密度が3.4g/cm3と大きく(天然の砂は2.5g/cm3)、「重い」ことが大きな特徴です。そのため、コンクリートの骨材やケーソン*1の中詰め材に用いると、津波に対し、より安定性の高い防波堤を築くことができます。これは、「粘り強い」港湾構造物を志向する国の復旧方針*2にもかなっています。また、工業製品であることから、安定した品質で確実な供給ができることも大きな特徴と言えます。
東日本で唯一の銅製錬所である小名浜製錬(株)(福島県いわき市)では、年間約50万トンの銅スラグを生産しており、これを復旧工事に利用して、東北における地産地消の資源循環に貢献していきたいと考えています。

*1 岸壁や防波堤で使う箱状の構造物
*2 「防波堤及び岸壁等の復旧の技術検討方針」(国土交通省東北地方整備局が2011年9月に発表)

規格を整備し、品質と環境安全性を確保

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写真直島製錬所でのバース拡張工事に使用

優れた特性をもった製品であっても、建設材料に使用する場合、規格や基準が整備されていなければ使用してはもらえません。
当社グループでは、銅スラグの特徴を生かした循環資材としての有効活用に向け、震災以前から品質や環境安全性に関するデータを蓄積し、JIS規格等の整備と安全な使用方法の確立に取り組んできました。特に、行政、学会、建設会社の方々に丁寧な説明を行い、意見をうかがって対応しています。これは、当社がセメントコンクリートや骨材といった建設材料の技術を有し、それらの規格作りに携わった経験を生かしたものです。この成果の一つとして、「港湾・空港工事における非鉄スラグ利用技術マニュアル案」が、(財)沿岸技術研究センターから2012年3月に出版され、これにより、銅スラグ普及の環境が整いました。
また、2013年2月には、直島製錬所(香川県香川郡)の自社バース工事において、国内で初めて、銅スラグを使用した鉄筋コンクリートの施工を実施して、実用性を実証しました。
被災地の再建、そして今後の「南海トラフ」を震源とする巨大地震への備えにも貢献できるよう、更に取り組みを進めていきます。

長期的な視野での取り組みを通じて、震災復興にも貢献する

写真 資源・リサイクル事業本部
リサイクル統括部長
立屋敷 久志

銅スラグのコンクリート骨材やケーソン中詰め材への活用は、銅製錬所とセメント工場をあわせ持つ当社グループの特性が発揮できる領域として、震災以前から、「銅スラグ利用促進ワーキング」を立ち上げ、長期的な視野で取り組んできました。震災復興に欠かせない土木資材不足の緩和や、今後の津波災害への備えの強化といった点で、大いに貢献できると考えています。
試験施工から本工事に移行しつつある現段階では、実績を積み上げていくことが重要です。直島の港湾バース拡張工事では、手がけた施工会社から「予想以上に施工性が良好だ」との評価もいただきました。
技術提案を通じて、いよいよ東北の港湾施設の復旧工事にもお役立ていただけることになり、新たな循環資材としての銅スラグの普及に向け、確かな手ごたえを感じています。

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福島の環境修復へ、進展する活動 ~除染、そして中長期的な課題解決に向けて~

本格的な除染へ

写真建物の調査〈ピーエス三菱(株)〉

写真放射線モニタリング
〈三菱マテリアルテクノ(株)〉

原子力事故による放射能汚染は、福島の復興における最大の障害の一つであり、国と自治体は「除染ロードマップ」に沿って、住民の方々が一日も早く戻れるように環境修復事業を進めています。
三菱マテリアルグループは、これまで培ってきた原子力関連技術を基盤として、国と自治体が実施する放射性物質を取り除くための除染事業に積極的に参入しています。
2011年度の除染モデル実証事業を経て、2012年度から本格的な除染作業を開始。当社グループは、放射線モニタリング、建物の調査、作業員に対する放射線管理、除染効果を確かめるための放射線の測定と分析等を実施しています。
環境省は、各地に避難されている地権者様お一人おひとりの心情に配慮して丁寧にご説明し、土地への立ち入りの了解、除染方法の確認等を含め、除染の同意を得るという膨大な作業を行っており、当社グループはこれらの作業をできるだけ円滑かつ効率的に進められるよう、同意書の作成、各地権者様との連絡・調整等のさまざまな支援を行ってきています。
これら一連の作業はこれまでだれも経験したことがなく、今後もさまざまな課題の発生が予想されますが、当社グループ一丸となって、これまでに得た知見を生かした取り組みを継続していきます。

除染工程の一連の流れ(環境省資料を一部修正し、追記)

図  三菱マテリアルグループが参入している業務
(除染作業については、郡山市において2013年7月から開始)

中・長期的な課題解決に向けた、研究開発

除染作業で取り除いた土壌等は、3年程度仮置場で一時保管した後、中間貯蔵施設で保管し、30年以内に最終処分施設へ搬出される計画です。当社グループでは、中・長期的な課題として、中間貯蔵施設の立地条件、放射性セシウムの挙動、焼却灰のセメント固化技術といった鍵となるテーマの技術開発に注力しています。
放射性廃棄物の処理・処分に関する当社グループの技術的知見を最大限に活用し、福島の環境修復に向けて、より安全で有効な解決策を開発し、提案していきたいと考えています。

地道な作業を、一歩ずつ着実に

写真 資源・リサイクル事業本部
地下環境システム部長
高瀬 敏郎

除染の事前調査では、避難されている住民の方々の家屋の状況を1軒1軒全て確認するとともに、それぞれの場所で放射線量を測定します。家屋調査では、建物ごとに3人1組のチームで、ほぼ1日かけて状況を調べており、飯舘村での放射線測定は10万ヵ所を超えました。
また、常に防護装備を身に付けながら行う一連の作業は地道で骨の折れるものですが、同意書作成システムによりデータの入力・整理を効率化する等の工夫をしながら、グループ一丸となって、一歩ずつ着実に業務を進めています。
今後は、汚染廃棄物や汚染土壌の貯蔵や処分の問題も避けられません。幅広い技術的課題をクリアするために組織横断的な技術開発も進めていきます。

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