三菱マテリアルグループの発展を支えて
~中央研究所と直島製錬所の100年~

当社グループにおける技術開発の中核を担う中央研究所と、画期的なプロセスによる高効率の銅製錬から多様な廃棄物の処理・リサイクルまで手がける直島製錬所は、いずれも2017年で100周年を迎えました。当社グループの発展をどのように支えてきたのか、これまでの歩みを振り返ります。

中央研究所 100年の歩み

三菱マテリアル(株)中央研究所は、全三菱の技術の出発点である「鉱業研究所」の創設以来、当社グループの発展を支え続け、2017年で100年を迎えました。国内の民間研究所の草分けとして誕生し、当社グループの幅広い事業領域において、数々の新技術・新製品を創出しています。
次の100年も、ユニークな技術を創出し社会に貢献するリーディングカンパニーを目指す当社グループ。その技術開発の中枢である中央研究所の一世紀にわたる歩みを振り返ります。

日本の民間研究所の草分け〈1917年~〉

第一次世界大戦中の1917年、三菱グループの前身である三菱合資会社が、当時国内では珍しい民間研究機関として東京府(現東京都)品川に設立した「鉱業研究所」、それが現在の中央研究所です。三菱合資会社の岩崎小彌太社長(三菱財閥4代目総帥)の慧眼によるスタートでした。
鉱業研究所は時代の要請に応え、徐々に研究開発領域を拡大し、品川の敷地が手狭になったため、1939年、埼玉県大宮市(現さいたま市)に移転しました。
第二次世界大戦後は、三菱鉱業(株)から金属鉱山事業を継承した太平鉱業(株)に所属し、石炭関係の研究部門は三菱鉱業社生産部石炭研究課となりました。設備の拡充や近代化を積極的に進め、研究開発領域も、より一層拡大していきました。

事業の多角化への貢献〈1964年~〉

1964年、鉱業研究所は「中央研究所」に名称を変更し、「鉱山」、「製錬」に加え、「金属加工」を事業の柱とする三菱金属鉱業(株)の多角化戦略のもと、海外の先進企業からの技術導入も行いながら、高純度シリコンや化成品、アルミ缶等、多岐にわたる研究を進めました。また、1959年から取り組み始めた三菱連続製銅法が実用化されたのもこの時期です。1976年には(株)三菱金属中央研究所として、一旦、別会社となりましたが、1983年に三菱金属(株)へ復帰しています。
1990年には、三菱金属(株)と三菱鉱業セメント(株)の合併で「三菱マテリアル(株)」が発足し、両会社の研究部門も統合されました。将来における事業の種(シーズ)となるような基礎研究開発を全社横断的に手がけるコーポレート・ラボとして、新規分野や新商品・新技術開発、基盤技術等に重点的に取り組む体制が整備されました。

常に市場動向を見据えた開発を推進 〈2007年~〉

2007年、中央研究所は本拠地を茨城県那珂市に移転。その後、自動車・情報エレクトロニクス・都市資源リサイクルの「成長三市場」に集中した研究開発を推進し、大きな成果を挙げました。現在は、次世代自動車、IoT、AIや、社会の持続可能性に貢献するエネルギー、環境リサイクル分野に注力しています。
創設以来、材料・プロセス技術を基軸としながら、応用分野を拡大し、相乗効果を挙げてきた中央研究所。これまで蓄積してきた、分析評価技術やCAE技術*等の「基盤技術」と、反応プロセス、金属・加工プロセス、薄膜・界面等の「コア技術」は、マテリアルグループの共有財産であり強みです。
今後もこの強みを更に高度化し、成長事業の育成に努めるとともに、事業競争力を強化するためのプロセス技術の開発を支援し、事業に貢献していきます。

* CAE: Computer Aided Engineeringの略。コンピューターによるシミュレーションを活用して材料やプロセスの開発を行う技術。

各事業領域に関連する主要な成果・貢献
事業 主要な成果・貢献
セメント 省エネルギー化(燃焼シミュレーション)、キルン運転支援システム
金 属 三菱連続製銅法、貴金属精製プロセス、新銅合金
加 工 超硬工具素材、超高圧技術、コーティング技術
電 材 シリコン関連基盤技術、ターゲット製造技術、高信頼性絶縁回路基板(DBA)、チタンブラック
アルミ アルミ缶軽量化技術(塑性加工技術)
その他/共通 分析技術、CAE、家電リサイクル関連技術、エネルギー関連技術、排水処理技術

変化を取り入れ、イノベーションを起こす

水嶋 一樹執行役員
技術統括本部副本部長
水嶋 一樹

当社グループには幾多の危機を乗り越えて変革を遂げてきた歴史があり、中央研究所はその原動力となってきました。材料・素材を中心として、研究員が日々向き合い、世界へ送り出している技術や製品には、人々の生活を大きく変化させ、豊かにする力があります。そして、都市資源リサイクルには、地球にやさしい持続可能な社会の構築を促す大きな潜在力があります。
自動運転、IoT、AIといったメガトレンドを背景に、時代は更に大きな変革期に突入しています。次の百年に向け、中央研究所も更に変化を取り入れ、「顧客視点」と「スピード」を強めることでイノベーションを起こし、新製品・新事業を創出していきます。
研究員の情熱を結集し、多様な経験や知識を持つ人材の育成や、失敗を恐れずチャレンジする風土の醸成、そしてオープンイノベーションの推進にも取り組み、優れた成果に繋げていきます。

「今」に繋がる主要技術開発成果

磨き続ける分析評価技術〈 分析 〉
分析部門は鉱業研究所設立以来、当社グループの分析評価を行っています。最先端の技術力を維持して技術開発を支え、製品の品質向上に貢献しています。

写真機器分析室(1940年)

1917年
  • 三菱合資会社の研究所として東京・品川に設置
  • 分析部門発足
1920年代
  • タングステンカーバイド粉末製造・焼結技術
1930年代
  • 埼玉県旧大宮市へ移転
高度な先端技術で半導体産業を支える〈 電子材料事業 〉
1958年に高純度シリコン製造研究を行いました。1980年代初期から開発をはじめたスパッタリングターゲット材は、現在では有機ELディスプレイ等にも活かされています。

写真スパッタリングターゲット

1950年代
  • 原子力平和利用開発
  • 高純度シリコン製造研究
夢の銅製錬技術へのチャレンジ〈 金属事業 〉
1959年より「三菱連続製銅法」の基礎研究に着手しました。後に続く貴金属の精製プロセス等の開発は、循環型社会構築に貢献しています。

写真三菱連続製銅炉火入れ式

1960年代
  • 中央研究所に改称
  • 昭和天皇・皇后両陛下行幸啓
  • 超高圧発生技術
  • 休廃止鉱山環境対策
  • 三菱プロセス基礎試験
  • 炭化チタン層成膜
高度な合金製造や塑性加工技術〈 加工事業、アルミ事業 〉
金属加工も鉱業研究所設立から行い、超硬工具素材や合金製造、アルミ缶塑性加工技術へ発展しました。超硬工具素材のタングステンのリサイクルも行っています。

写真各種合金材料の開発

1970年代
  • 別会社化
  • 耐熱耐食合金開発
1980年代
  • 三菱金属(株)に復帰
  • 黒色チタン粉末
  • ターゲット研究開発
  • Al缶塑性加工技術
  • 地熱貯留層管理
  • 貴金属製品リサイクル
世界初のハイブリッド車に採用〈 電子材料事業 〉
1980年代から行っていた異種材料接合の研究は、1990年代に高信頼性絶縁回路基板(DBA)の開発に繋がり、世界初のハイブリッド車に採用されました。

写真DBA(Direct Bonded Aluminum)

1990年代
  • 総合研究所に改称
  • 高信頼性絶縁回路基板(DBA)
  • 貴金属新プロセス
環境負荷低減に向けて〈 セメント事業、環境・エネルギー事業 〉
炭鉱や鉱山の技術を基に、1990年代から家電リサイクルプロセスを検討しました。
1980年代から導入したCAE技術は、セメント製造プロセスにも応用されています。

写真薄型テレビの自動ネジ外し装置(ねじトラッカー ®)

2000年代
  • 中央研究所に改称
  • 茨城県那珂市へ移転
  • 家電製品リサイクル
  • セメントキルン運転支援システム
  • タングステンリサイクル
2010年代
  • 端子用新銅合金
  • フレキシブル薄膜サーミスタ

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直島製錬所 100年の歩み

1917年に三菱合資会社が設立した直島製錬所もまた、2017年で創業100周年を迎えました。小規模な反射炉から三菱連続製銅法により飛躍的な進化を遂げ、近年E-Scrap処理事業で世界トップの製錬所となった当社グループの重要拠点、直島製錬所のこれまでの歩みを振り返ります。

製錬技術の確立と生産能力の拡大〈1917年~〉

当社の金属事業は、三菱の創始者・岩崎彌太郎が1873年(明治6年)に岡山県の吉岡鉱山を買収したことに始まります。明治40年代から大正期にかけて、三菱合資会社は各地に所有する鉱山に設置した附属製錬所にて製錬を行っていましたが、鉱害対策や国内の低品位鉱の採掘・選鉱技術の進展等から、小規模鉱山の開発が進み、周辺鉱山から銅精鉱を集めて製錬を行う「中央製錬所」の設立が検討されました。これに伴い、国内鉱山や大阪製錬所に近く、海外からの原料輸入にも便利で、煙害問題の懸念が少ない立地として、香川県直島村のご理解とご協力のもと、1917年、当時の最新技術による反射炉を有する直島製錬所を設置しました。製錬が軌道に乗るにつれ設備を増強、ほかの鉱山からの銅精鉱も受け入れて生産を拡大していきました。
第二次世界大戦後は石炭や人手不足による操業停止に見舞われますが、経済復興期を迎えて精銅生産能力を段階的に増強してきました。

銅製錬のイノベーション〈1974年~〉

直島製錬所に最も大きなインパクトをもたらしたのは、1974年、世界で初めて「三菱連続製銅法」を採用した銅製錬プロセスの誕生でした。 三つの炉を樋で繋ぎ、原料の装入から精製まで全て連続で行うこのプロセスは、高効率・省エネルギー、かつ環境負荷の低減を実現する画期的なもので、今日も直島製錬所の操業の基盤となっています。また当社の特許技術として、海外への技術輸出も進められました。
大阪製錬所の閉鎖に伴い、当社グループの貴金属生産は直島製錬所に集約され、1989年には当時としては東洋一の金生産能力を誇る貴金属工場が建設されました。

リサイクル事業の推進〈2000年頃~〉

2000年に循環型社会推進基本法が制定され、廃棄物・リサイクル対策への社会的気運が高まる中、直島製錬所は、直島の隣にある豊島の産業廃棄物問題への協力をきっかけに、溶融飛灰再資源化施設と有価金属リサイクル施設を新設し、リサイクル事業に進出しました。ランスから銅精鉱と空気を吹き込む三菱連続製銅法独自のプロセスは、多量のリサイクル原料の処理に適しており、有価金属リサイクル施設との組み合わせにより、リサイクル事業を強力に推進しました。社外の廃棄物中間処理施設等で生じる溶融飛灰や自動車シュレッダーダスト、廃家電、廃基板等のリサイクル原料を受け入れ処理し、銅製錬プロセスを利用した銅や貴金属の回収を始めました。
現在では世界トップクラスのE-Scrap処理能力を誇り、環境面のみならず、収益面でも大きな成果を生み出しています。2016年には直島製錬所に第二金銀滓センターを、そしてオランダに新会社「MM Metal Recycling B.V.」を設立。欧州からのE-Scrap受け入れ拡大を図る等、リサイクル事業の更なる拡大を進めています。

直島製錬所と地域社会

直島町とともに歩んできた直島製錬所は「地域社会の発展がすなわち製錬所の発展に繋がる」との考えのもと、積極的な地域貢献に取り組んでいます。
また、環境にやさしい循環型社会づくりのために、島ぐるみで活動しています。

写真

N. NEXT計画グローバルなE-Scrapリサイクル事業へ

図

直島製錬所では2017年に創業100周年を迎えるにあたり、「子や孫に残す安心して働ける製錬所をつくろう」をスローガンに、「次の100年を生き抜くために、激動する世界と向き合い、圧倒的なバリューを持つ製錬所を創り上げる」ことを目指し、2011年に「収益」、「安全」、「環境」の3項目を重点課題に掲げた6ヵ年計画「N.NEXT計画」を策定しました。この計画は、グローバルなE-Scrapリサイクル事業への展開を支える基盤として花開き、収益力でも美しさでも世界に冠たる製錬所となりました。

* N.NEXT(Naoshima. New Era with eXcellent Tradition):良き伝統を継承しつつ、新たな時代を迎えるにふさわしい直島製錬所を創り上げる

常に時代を切り拓く直島製錬所

鈴木 康信専務執行役員
金属事業カンパニー
プレジデント
鈴木 康信

直島製錬所は1917年に操業を開始するにあたり、わが国初となる反射炉製錬を採用したことを皮切りに、1974年には画期的な連続製銅技術である三菱連続製銅法を導入する等、常に時代の先端をいく銅製錬所であり続けてきました。1989年には大阪製錬所から貴金属工場を移転して貴金属事業を開始し、1991年に完成した新銅熔錬工場とあわせ、2004年には有価金属リサイクル施設・溶融飛灰再資源化施設を竣工させてリサイクル事業を本格的に稼働し、銅製錬・貴金属・リサイクル3事業による収益体制を確立しました。
2016年には第二金銀滓センターの竣工により、E-Scrapの年間処理能力を11万tに伸ばしており、当社グループE-Scrap処理の中核を占める事業所となっています。
世界経済の趨勢から日本の製造業の立ち位置は近年大きく変化していますが、100年にわたり培ってきた技術革新・先取の精神により収益・環境の両面で世界のライバルを凌駕し、また安全な操業を追求していきます。

 
1917年
  • 三菱合資会社の中央製錬所として設立

写真直島製錬所全景(1932年頃)

1918年
  • 反射炉の操業開始
  • 粗銅生産能力月300t産出開始
1969年
  • 電気銅生産能力月7,500tの第二反射炉、第一電解工場一式完成

写真建設中の三菱連続製銅炉(1973年)

1974年
  • 精銅生産能力月4,000tの連続製銅炉操業開始
  • 第二電解工場操業開始
    電気銅生産能力月13,000t
1989年
  • 大阪製錬所より貴金属製錬工場移転
  • 貴金属の生産開始
1991年
  • 熔錬工場(反射炉)、旧連続製銅炉 操業停止
  • 精銅生産能力月17,000tの連続製銅炉新設、生産開始
1992年
  • 電気銅生産能力月15,800tに増強
1998年
  • 豊島飛灰の処理を香川県と共同研究

写真有価金属リサイクル施設(2003年)

2003年
  • 溶融飛灰再資源化施設稼働
2004年
  • 有価金属リサイクル施設稼働
  • 貴金属湿式プロセス稼働開始
2006年
  • 電気銅生産能力月19,500tに増強
2008年
  • ハイパーリサイクル計画実施(前処理設備の増強によるリサイクル能力の拡大)
2014年
  • 平成26年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰受賞
2016年
  • 第二金銀滓センター完成
  • MM Metal Recycling B.V.設立

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