合金開発技術

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日常をつなぐ技術

銅に秘められた多様な特性を引き出す独自の合金開発技術で、お客さまの求める特性を見極め、その実現に燃える開発者達のインタビューです。
写真左より:森、牧、松永

現代の私たちの生活のあらゆるところで、信号や動力となる電気が日夜たゆむことなく地球を駆け巡っています。

例えばスマートフォンやパソコンなどの電子機器を手に取ってください。皆さんも、充電やデータの転送のため、例えばUSBなど、様々なコネクターを利用していると思います。

例にあげたUSBだけでなく、電化製品や自動車の中をのぞくと様々な電子部品同士をつなぐ無数のコネクターを見つけることができるでしょう。

それらのコネクターのキーマテリアル、金色、銀色に光るめっきされた金属には銅合金が主に使われています。

電気を効率的に伝える導電性、複雑な形状に折り曲げたりできる成形性、破損などを起こしづらい機械的な強さなど、様々な特性が求められる高度な銅合金の製造と供給によって、私たち三菱マテリアルグループは、人々の日々の暮らしを陰ながら支えています。

今回は、私たちマテリアルグループの三菱マテリアル㈱と三菱伸銅㈱とが連携し次世代の銅合金を開発することを目的としたプロジェクト「FAST(Future Alloy STrip)」に関わった開発メンバーに、その成果の一例である銅合金、MSP5MSP8について思いを語ってもらいました。

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お客さまのニーズに応える合金でなければ意味が無い

MSP5の用途例(車載用小型端子)MSP5の用途例(車載用小型端子)

MSP5の特徴MSP5の特徴

──まずはFASTプロジェクトについて教えてください。

牧 プロジェクト統括を担当した牧です。FASTは、マテリアルグループの力を最大限に発揮できるよう、グループ内の組織をあげて、銅素材製造~合金開発~合金製造の一連のプロセスの連携を強化し、次世代の合金開発に取組んだプロジェクトです。
私が特にこのプロジェクトで誇りに思っていることは、今回ご紹介するMSP5MSP8の他、MNEXなど、お客さまのニーズに応えることに徹底的にこだわったということです。

──お客さまのニーズには例えばどのようなものがあるのでしょうか?

森 MSP5においては主に自動車に搭載されること、しかもますます高度化される自動車の快適性能向上、IT化に貢献することです。走る・曲がる・止まるという基本性能をふまえつつ、自動車に求められる姿が変革を遂げようとしています。今でも自動車は一般ユーザーの皆さんが思っている以上に電子化されていて、色々なセンサーや装置の助けを得て安全・安心・快適に制御されています。そのトレンドが加速していくなかで、部品全てに小型・軽量化などが求められ、その一環で高度な機能をもった部品をつなぐ端子も当然のごとく小型化に応え、極限まで折り畳まれてもしなやかで信頼性の高い特性をもった合金が期待されています。
比喩的な表現になりますが、高い導電性と高い強度を持った薄い合金で、極限まで小さい折り鶴を折れるのか...みたいな世界ですね。

松永 一方、MSP8は大電流に耐えうる端子やバスバー向けに開発された合金です。やはり自動車に搭載されることを目標として開発しましたが、主にハイブリッド車や電気自動車等の高い環境性能を持つ次世代自動車の普及や、今後の市場の成長において不可欠なモーター等へ「力を伝える」合金として役割を担っていければと思っています。
優れた導電性はもとより、加工性が高く、また高温使用時でもばねのへたりを抑制し端子やバスバーとしての基本特性をしっかりと持っていることが特徴です。

松永松永

──なるほど、細やかさのMSP5と大仕事のMSP8、対応するニーズも合金の個性も非常に対照的ですね。

牧 結果だけを述べると簡単なようですが、実際の合金開発はチームのメンバーの勇気と努力の結晶です。市場トレンドや自分たちのビジョンという大局観を持ちつつ、何度もお客さまを訪問しヒアリングを重ねました。地道な努力なしにはいつまでたっても詰めが甘く、完成へとつながらないのです。
もちろん確信をもって開発に邁進しているわけですが、お客さまが求めている製品と、私たちの求めているものとが一致したときほど勇気づけられることはありませんでした。

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銅-マグネシウム系の合金開発技術が鍵となった

──マテリアルグループのユニークさはどこに現れていますか?

牧 MSP5MSP8、何れの合金も金属の強度を高める、または求める性能を実現するために「固溶強化」という合金設計手法を用いています。中でも銅に対してマグネシウムを高い精度で固溶させ、量産できるのはマテリアルグループが最も優れている点であると思っています。これは私見ですが、市場のニーズと、グループのコアコンピタンス、合金設計、製造技術を上手く合致させたというところにユニークさが現れていると思います。

実は開発初期は最適解を探すにあたって、銅-マグネシウム系は多くの選択肢の内のひとつだったのですが、この延長線には様々なニーズに応えられる独自のバリエーションが描けることに気づき、一気に道が開けました。

森 ネーミングやブランドというのは非常に重要なポイントですね。今回開発した合金をMSP5MSP8と命名しました。これは、世代がずいぶん離れていますが、ロングセラー商品であるMSP1が、銅-マグネシウム系合金ということで技術的な合理性もあることから、使い慣れたMSP1と同じシリーズの合金とすることによって、より高い性能を求めながらも実績を優先させたいというお客さまの不安に対しても応えていけるようにしました。

森

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研開製販、一丸となった強さを実感

──今までのお話を伺うと、どうやら経営層から営業担当まで、グループのフルラインで臨み、加えて言うならお客さまも密接に関わっての開発プロジェクトだったような感想を持ちました。

牧 元々「垂直価値連鎖」という経営戦略があり、その中でFASTプロジェクトを立ち上げて組織を越えて活動できたことで、様々なプロセスの方々と関わり合いながら開発できたと思っています。また、研究開発という立場でありながら、営業担当の皆さんのご協力で、お客さまのニーズを伺う、または新合金をアピールする機会を頂けたことが、何よりも成功につながるカギであったと実感しています。

牧

──最後に、皆さん、今後はどのようなチャレンジをして行きたいですか?

松永 実はMSP8を担当する前までに開発していた合金は世に出せなかったのです。開発者としては、多くの方に使って頂いて、社会の中で役立つ製品を作ることが何よりもモチベーションにつながります。もっと正直に言うとやはり売れたい、売りたいですね(笑)

森 自動車の進歩とともに私たちの合金があるというようにお客さまから評価されたいです。また、その進歩を後押しするぐらいの製品を作って行きたいです。

牧 今日は何回も市場・お客さまのニーズに応えると申しましたが、それは常に変化するものですし、その変化もより多様で早いものになると感じています。
情報化された社会ですから、昔よりはトレンドの情報は手に入りやすくなっています。一方で、その流れに反するように映るかもしれませんが、現場に行かないとお客さまが本当に求めているものにたどり着きにくくなってくるのではないでしょうか?
その中で私は、手を動かし、脚を動かしながら、そのニーズを集めてオリジナリティのある製品開発をして行きたいと思います。

写真

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